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全身を巡る酸素も奪われ、反り返る脳みそがガンガン疼く。口腔に溜まる唾液がじゅぶじゅぶと溢れ出した。陰茎が奥に進むたびに押し出され、口角から透明な体液がもれだす。どうにかして口を閉じたいのに、顎を固定する指先が邪魔をするのだ。
「ンふ……ッ!」
うねうねと、曲がりくねる生きた大蛇に喉奥を侵食されるようだ。くぐもった悲鳴を上げて、衝撃で飛び跳ねた身体は上からラシャドに押さえつられた。身じろぎさえできなったルトに、挿入しやすくなったなと、どちらの言葉かわからない声が聞こえた。
「ぅご……ッ、ぉ……ッ」
「大丈夫、ゆっくり息を吐いて、吸って。口は塞がってるから、鼻で息をして。ほら、首を動かして前に起こすよ。ちゃんと、食道に入れてあげるって」
「ぐっ、んぉ……ふっ、ぅふっ……ふッッ!」
ルトの柔らかな喉の奥壁を、硬い先端でごつんと突かれた。鈍い音が、耳奥にごわんと響く。衝撃を受けていないはずの脳みそまで揺すられて、ぐつぐつ沸騰しそうだった。かっと見開く視界は真っ赤に燃え、やがて真っ黒になるかもしれない。
ルトの顔の位置にあわせて中腰になるエグモントの声が、ぐぅわんぐぅわんとこだまして、かろうじて聞こえた。
息が詰まる、喉が破裂する、死んでしまう。耐えられない。口を塞がれたルトは必死でエグモントの声を追った。ゆっくり鼻で、息を吸って、吐いて……。必死に酸素を取り入れたルトの喉奥の抵抗が、わずかに緩んだ。
「そう、その調子……ゆっくり動かすよ」
行き止まりの先を暴くように、後屈する首を浮かせて前屈させられる。気管と食道の分岐点だ。串刺しになった顔面を前倒しにされて、行き先を探ってくる。口の中を出入りする赤黒い陰茎が、ふがふがひくつくルトの鼻先を擦った。ずずずと、前倒しにされた白い皮膚が持ち上がる。視界が上転する。声だけでなく見た目も豚みたいになったはず。
ずるずると首の角度を変えて、口腔内を通り過ぎ、切っ先が喉の奥を滑った。瞬間、胸の奥の細い器官に激痛が走る。大蛇ではなく、鋭い長剣を突き刺されたかもしれない。胸の奥に灼熱を穿たれて、切り裂かれた喉が破れそうだ。ばくばく弾ける心臓を、このまま一突きにされるのだ。蠢く怪物を、ルトの狭い食道が丸ごと呑みこんでゆく。
ぎちぎちみちみち。涙が盛り上がって視界が歪む。鼻で酸素を吸っていたのに呼吸がさらに細くなった、おそらく鼻水も垂れている。
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