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第六話 悪夢の日々
「これで治療は終わりました。すぐに、目を覚ますでしょう」
遠い意識の隅で誰かの喋り声が聞こえた。どうしてか、頭から足先まで身体中が痛かった。けれど今は痛みが嘘のようにひいている。ひりひりする喉と食道のせいで、呼吸がしにくかったのに息もしやすい。そこでふと、ルトは意識を取り戻した。
「あ、起きた?」
「ここ……」
最小限の家具しかない真っ白な部屋だ。紫水の瞳を動かすと、ルトを覗くエグモントの姿があった。そこでようやくここに至った経緯を思い出した。
ルトが最後に覚えているのは、エグモントの凶悪な陰茎を下から揺すられて、根元まで突き入れられた、そこまでだった。ルトはいつの間にか気を失っていたらしい。あれからどれくらいたったのか。
鮮明に思い出された恐怖に、目をかっと見開いて飛び跳ねた。広い寝台の上で尻ごみすれば、ルトが移動した痕跡を残すように、一筋の白濁が尻から溢れてシーツを汚す。
ラシャドの体液か、エグモントの体液か。おそらく二人が、ルトの中で混ざりあった痕跡なのだろうなと、ぼんやり考えた。
優しそうに喋るこの獣人が、怖かった。彼はきっと温厚という仮面をかぶっているだけで、慈悲の心を持ち合わせてはいないのだ。あんな、巨大な陰茎を、彼は絶叫するルトの胃と腸に無理やりねじこんだのだから。
青ざめて距離をとるルトに、エグモントが優しく話しかけてきた。
「君、意識が飛んじゃったんだよ。けっこう強く叩いたけど起きなくてさ。俺もつい、夢中になっちゃってね。気がついたら呼吸も変になってて、君の足環が魔術師を召喚したんだ。傷を治してもらったんだよ」
「魔術師……」
すでに部屋にはルトとエグモントの二人きりだ。では先ほどの声が魔術師か。ルトは何となく状況を理解しながら気を落ちつかせた。大きく息を整える。
「そう。大変だったんだから」
「あ…ぁ…う、ご、ごめ……、なさ……。ぁりがと、ござぃ、ます」
ずっと黙っていることもできなくて、優しい顔立ちを険しくさせるエグモントに、固まる唇を開く。ずいぶん迷惑をかけたのか目の前の形相が恐ろしい。言いがかりをつけられて、また挑まれたらたまらない。
どうにか詫びを口にした。するとエグモントはみるみる目を丸くする。大柄な体躯で腹を抱え、あははと、愉快な音を立てて肩を揺らした。
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