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「君、面白いね。死にそうなほどぐちゃぐちゃに犯して、お礼言われたの、初めてだよ」  けらけら笑われてルトは困惑した。言われてみれば確かに、礼まで伝えたのはおかしかったかもしれない。ルトが手当てを受ける羽目になったのは、もとはと言えば彼ら――おそらくエグモントによる暴行が大きいだろうから。そう思い直したが、言葉にしたものは取り消せない。  けれど、魔術師が来るまで、ルトの身体は悲鳴をあげるほど痛んでいた。それがすっかり良くなっていて、本当に生き返ったのだと安堵した。だから、ありがとうの言葉は自然とルトの口をついただけだった。 「あの……」 「実際、俺は何もしてないしね。言ったでしょ、魔術師を呼んだのは君の足環だ」 「足環?」  意味がわからず、ルトは無意識に左の足首を見る。そこには、目を見張るほど美しいアメジストの宝石があった。  紫水の瞳を持つルトにあつらえたような、ルトに似合いの色だとエミルが言っていた。そんなものがお似合いだと喜ばれても嬉しさの欠片もない。が、エミルは本心から満足しているらしかった。ルトは頭を抱えた末、顔を引きつらせて頷くだけにとどめた、のだが。  だがそれにしても、宝石が魔術師を呼ぶとはなんだ。ルトの困惑に、聞いてないのとエグモントは首を傾げた。 「気分がいいから教えてあげる。その足環、魔術師の術がかかってるんだよ。足環の持ち主の生命兆候が、死にそうなくらい低下したら、宝石が真っ赤に染まって魔術師が飛んでくるんだ。孕み腹を死なせないためにね」  そんな話は聞いてない。この部屋のこともそうだが、繁殖用以外の詳しい説明は省かれているらしい。後宮でのルトたちは、子を孕む道具、思い入れがあるお気に入りの玩具ならまだしも、壊れたら破棄するだけの消耗品に説明する必要はないのだろう。  ではそうするとルトは、彼の蹂躙に命を落としかけたことになる。やはり、礼などいらなかった。ルトは心のなかで悪態をついた。 「それに君はまた、これから大広間に戻らなきゃいけないし。傷だらけじゃ駄目でしょ」 「え」  さも当たり前だと口を開くエグモントに動揺する。ルトはシーツを握り締めて紫水の瞳を揺らした。獣人で溢れ返っているだろう大広間に戻る。そうなれば、ルトはまた。

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