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 相手はひとりのときもあったし、三、四人に囲まれて嬲られるときもあった。大広間で、部屋で、人が行き交う空の下で。いっきに襲いかかられて、数も数えられなくなってしまった。  朝も昼も、ときに夜も。時間があればひたすら獣人と繋がっている。交わる相手はころころ変わって、ルトは、自分も獣になった気がした。  爛れた性交を繰り返すだけの、一週間以上の日々が過ぎた。長い一生になるだろううちの、たった一週間あまりが過ぎただけだ。だが繁殖用の立場を徹底的に刻みこむにはあり余る時間だった。  教えられたとおり、一週間を過ぎればある程度の自由は許された。足輪が振動したときに、自由を放棄して自ら大広間に向かう。  情け容赦ない獣人に逆らう少年はいない。一週間という手酷い凌辱の時間は、ルトたちの抵抗を根こそぎ奪うための時間でもあっただろう。  昨日もルトは夜遅くまで貪られた。ようやく解放されても寝付けずに、浅い睡眠を適当にとった。悪夢が覚めない朝を迎え、だるい身体を引きずって、食堂に顔を出す。ちらほら見知った少年たちがうつむきがちに集まっていた。  沈んだ表情で、トレイを眺めたまま動かないエミルを見つけ、ルトは迷わず足を向けた。 「エミル、おはよう」 「ルト……」  トレイを手に、隣へ腰かけるルトをエミルが虚ろな瞳で見上げてきた。朝起きると、エミルの姿は寝台になかった。昨夜ルトが寝台に戻ったときは眠っていたから、おそらく明け方に呼び出されたのだ。そのあとどうなったかなど想像に難くない。  四十一人のうち唯一の完成体になったエミルは、集められた誰よりも獣人に酷使されていた。日に日に、エミルの顔から穏やかだった表情が抜け落ちていく。 「エミル、少しでも、食べないと……」  ほとんど減っていないトレイを見ながらルトは言う。だがエミルは口をつぐんで首を振った。食べたくないと、無言で意思表示したエミルに、ルトの気も落ちこむ。  今は獣人の欲求が満足できているからか、以前はときどきあった食事の嫌がらせはなくなった。まともな食事を食べられている。だから食欲があるかといえば、あるわけがない。とてもじゃないが、ルトも食べ物などとりたくなかった。

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