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 それでも、自分で食べないなら、鼻にチューブを入れて流動食を流すのも面白いと言った獣人を思い出し、数回だけ口に含む。連想してエグモントに与えられた苦しみを思い出してしまったからだ。  たった数口だ。それだけをもそもそ時間をかけて食べる。でも飲みこめず、水に手を伸ばしたとき、ルトの左足首がぶるぶると振動した。しつこく口に残る食物に、少量の水を含ませて嚥下する。今さっき置いたトレイを手にして、慌てて立ち上がった。 「ルト?」  エミルが見上げてきた。ルトは困った顔で、中途半端な笑みを作った。 「その、ちょっと……行ってくる」  エミルが悲痛な顔をする。魔術師に、すべてを管理されているのは本当だった。ルトがきちんと大広間に着くまで、足環はずっと振動する。早く行けと。  凌辱されるのをわかっていて進んで行きたいとは思えない。それでもルトは小走りに大広間へ向かう。以前、行きたくないとのろのろ時間をかけて行けば、遅いと気性の荒い獣人に仕置きをされたのだ。あのときの苦痛と恐怖はルトをずっと戒めている。  大広間を警護する、剣を携えた獣人にじろじろ見られながら、天井まで届く重厚な扉をくぐる。狂乱の空間では数人の少年が、様々な巨根で突きあげられている最中だった。  憐れみを誘う呻き声や濡れた交合音が、競うように飛び交う。異様ななかで、ルトの耳がはっきりと静かな音を拾った。 「来たな」  黒い耳と尻尾と、漆黒の瞳。ルトの姿を見つけたラシャドが、ふぁさりと毛並みのいい尻尾を揺らして近寄ってきた。  どうやら彼は本気で、いちばん最初にルトを孕ませたいらしい。ルトの何がそんなに気に入ったのか知らないが、この一週間以上毎日、ひどいときは一日に何回も。ルトは彼に呼びだされ、貪られていた。  ラシャドとの距離が縮まるにつれルトの胃が重くなる。さっき、食事を数口だけに留めておいて良かったと思った。このままラシャドに挑まれたら、体内から胃が押し上げられて、吐いていたに違いない。ルトは欝々した気を悟られないように、細い息を噛み殺した。 「だからてめぇはよ、ぼけっと突っ立ってないで早く来い。部屋に行くぞ」  威圧的な雰囲気にルトの身体が大きく跳ねる。拍子に口から滑り出てしまった言葉は、ルトの心からの願いだった。

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