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6-(6)
「い、行き、たく、ない……」
無意味な抵抗を口にしてしまった。相手によっては些細な抵抗さえ気に入らず、罰を与えられてしまうのにだ。
この一週間あまりでわかったのは、乱暴だと思ったラシャドは意外と暴力的ではないということ。本当に暴力的で嗜虐性癖がある獣人は、気分のままにルトを袋叩きにしたあげく、慣らしもせずに凶悪な陰茎を挿入する。
白い皮膚から血をしたたらせ、嫌がって、痛がって、暴れ狂う幼い身体を支配する抱き方を好む。半透明な紫水の瞳が、涙に溺れる姿がそそるのだと。
最低最悪としか言いようのない性交だ。何度か残忍な性癖を持つ獣人にも呼び出されたが、もしその獣人が相手だったら、ルトは無意味な抵抗さえ口にできなかっただろう。
無駄とわかっていてもかすれる言葉を紡げたのは、今ルトの前に立つ獣人が他でもない、ラシャドだったからだ。
けれど暴力的でないと言ってもラシャドも所詮は獣人だ。ルトを貪ることを是として、ルトの意思などないように扱う。精も根も尽き果てて、使われすぎたルトが、どんなに悲痛な叫びをあげても、ラシャドの子種で腹が膨れるまでは解放されない。
ラシャドを受け入れている最中に他の獣人が混ざることもあれば、初めから、ラシャドと彼の友人を交えて行為に及ぶこともある。ルトが、大広間で知らない誰かの相手をしていれば、興に乗って平然と挑んでくるときだってあった。
結局ルトはその程度のものだった。ラシャドの……獣人の子を孕むためだけに、使われているだけの。ただ抱き方が、他の獣人に比べて暴力的ではないというだけで。口答えしたルトのささやかな抵抗に、ラシャドは辛辣に冷笑した。
こうして並ぶとルトはラシャドの肩にも届かない。少年らしさを色濃く残すほっそりするルトと違い、迎え入れる相手は鍛え抜かれた体格だ。完璧なまでに。
くっきりした端正な顔で、漆黒の瞳で。冷たくルトを見下ろす口元が、無言で笑みを浮かべただけで、ルトにはもの凄い圧力がかかる。ルトを取り巻く空気がびりびりと痺れていく。
怒らせてしまったかと、早くもルトは後悔した。ルトの緊張した喉が上下する。喉に張りつく声は出ず、ただ紫水の瞳が、ラシャドの形良い唇の動きを追った。
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