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「た、たおれたの……っ?」
横たわった少年の傍にいた、別の子が狼狽えた声を上げた。切迫した様子と声色に、ルトは弾かれたように身を動かした。
小さな悲鳴の合間を縫って、汗をだらだら掻いて震える背に手を伸ばす。優しく、けれどしっかりと。息を詰まらせ小刻みに振動する背中へ、ルトの温もりを伝えていった。
「大丈夫、落ち着いて。ゆっくり、ゆっくり。細く、口をすぼめて、息を吐いて」
シャド村にいたころ過呼吸になった子がいた。初めて遭遇したときはびっくりして、上手く対応できなかった。また同じ状況になったとき、今度こそ助けられたらと、ルトは必死で医学書を読み漁った。まさか、シャド村から遠く離れた獣人の国で、培った知識が役に立つとは思わなかったけれども。
呼吸の間隔が徐々に長くなるまで、ルトはずっと震える背をさする。ひきつる少年を覗きながら、最初は呼吸に合わせて短く素早く、次第にゆるやかに穏やかに。ふぅ、ふぅ。ルトも一緒に息を吐き、呼吸の感覚を伝え、長くしていく。上下する肩を誘導するように、ルトの手が少年の背を励ましていく。
ようやく少年の息がなだらかさを取り戻した。きつく顰められた眉根からも力が抜ける。落ちついた様子にルトが安堵のため息を出せば、周りからもほっとした雰囲気が漂った。
「すごい」
声変わりが終わり切っていない明るい声に目をやる。倒れた少年の傍で声を上げた少年が、ルトのすぐ横にいた。焦げ茶色の瞳をまん丸にさせてルトを見ている。いつの間にか、ルトの周りには、少年たちが集まっていた。興味津々と集められる視線に、ルトは戸惑いつつも口を開いた。
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