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 その場がしんと静まる。まさか。本当にトンミが。無茶だ、捕まってしまう。ただでさえルトたちの足環は外れないのだ。ましてやなにも持たない少年が、獣人と魔術師に敵うはずない。考えなくてもわかること。だが捕まった先は……どうなる。  魔術師のきつい目に曝されて、一秒が数分にも感じられた。誰も言葉を発せず、ただ、明けない夜を思わせる時間の長さに固唾をのむ。どれくらい過ぎたのか、正確にはわからなかった。  風のない寝所で凍るような冷気が渦巻いて、四人目の魔術師が姿を現した。黒いマントを羽織り、片腕にはぐったりした少年を後ろ手に拘束している。赤茶色の髪だ、トンミだった。 「うゥ……っ、んーっ、ンンーっ!」  突然魔術師が現れたことよりも、ルトたちは泣き喘ぐ姿に絶句した。  トンミは全裸だった。少年らしく健康的に焼けた肌には、いたるところに白濁がこびりつき、目隠しをされている。苦し気な声を発する口もと全体は、黒い口枷に覆われていた。  口枷の左右から細いベルトが後頭部に伸びて、固定する。左右の頬肉はベルトでくいこみ拘束の強さを主張していた。トンミのほっそり尖る顎先は、大きく下がり、口を開けたままだと気付く。  息もしづらそうにくぐもった声をあげ、飲みこめない唾液を顎先に垂れ流す。ときどきトンミの喉が、自分の唾液をこくんと飲もうと上下した。しかし上手く飲めないのか、激しくむせては、口の中の何かを吐き出そうと嘔吐く。  その動作には覚えがあった。猛々しい男根を、無理やり口腔の奥まで含まされた動きに似ている。

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