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 隷従国のヌプンタから集めた少年は、皇帝にとってこそ、ただの孕み腹だった。獣人が繁栄するためだけの道具にすぎず、それ以上でもそれ以下でもない。  使える道具が足りなくなればたった一声で集めればいいだけ。あの後宮でなにが起ころうとも無関心で、たとえ孕み腹が、王宮の片隅でひっそり息を引き取っても構わないのだ。  シーデリウム帝国の絶対王者である皇帝が蔑むモノだから、いつまでたっても人間に対する価値は上がらないままだ。  ラシャドの返事に、グレンは長い指先で口元をさすった。なにか考える素振りだ。 「そういえば……。今朝、陛下に報告があったか。ツエルディング後宮のひとりが、昨夜脱走したと」  いくら人間嫌いとはいえ後宮内のこと。孕み腹の報告は逐一皇帝には届いている。ラシャドはかかっと豪快に笑った。 「脱走? そりゃ愚かなガキがいたもんだな。初日にあんだけ追い回して痛めつけても逆らうとは。ますます行かなくて良かった。そんなくだらねぇことに付き合ってられっか」 「またお前は。任務を怠るなよ。だがそういうラシャドも、近ごろじゃあ後宮に入り浸りだって聞いたぞ。相手をさせるのはいつも同じ腹っていうじゃないか」  きちんと話は上がっている。ラシャドより数センチ低い位置から肘先でつつかれた。くだらないと言い捨てながら、ちゃっかり孕み腹を使っているだろう。そう指摘されて、ラシャドは筒抜けかと愚痴をこぼした。 「あれは別だ。俺が、いちばん先に見つけたからな」  迷いなく告げる口元が知らずに笑みを浮かべた。本来なら獣人は、孕み腹の情報を魔術師から得て子種をどの腹に注ぐかを決める。だがラシャドが目をつけたのは、それより前だ。  黒髪に半透明の紫水の瞳。あの孕み腹はルトといったか。その名を呼んだことは一度もなかったが、呼ぶ必要もないだろう。ヌプンタから、貢ぎものとして王宮にやってきたその日に見つけた、ラシャドの獲物。  ツエルディング後宮を公に開放する前に、いつしか少年たちを盛大に犯すようになった。どうせ国中の獣人に穴という穴を使われるのだ。与えられた立場を嫌というほど思い知らせ、逃亡する気がおきないまでいたぶり尽くす。精力的な獣人に抱かれて命を落とすくらい脆弱ならば、どのみち生きてはいられまい。

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