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体内の滑りが格段に良くなって、小刻みにうねる腸の襞が大小の生き物のように男根へ吸いついてくる。少年が荒い息をつむぐたび、狭い肉の輪が、柔らかく締めつけてきた。押しこんだ剛直の根元から先端までを、隙間なく。
細い身をしならせては波を打ち、強弱をつけては絡みつくのだ。ラシャドの形に喰いこんで、先端までぴたりとはまる肉道の刺激はクセになりそうな快楽だった。この孕み腹に、種を注ごう。そう決めたのはこのときだ。
なにより、不機嫌も露わな皇帝に、けだものと吐き捨てただけで大したものだ。それがさらに関心を引いた。
激しい突き上げでがくがく揺れる細い首は、片手でへし折れるほど弱いものだ。いつ嬲り殺されてもおかしくない。命を捕られた状況でどこにそれほどの意思があるのか。
身を挺して子どもを守ったことと言い、なんとも気骨のある奴だと。そのとき初めて、少年自身を気に入ったのかもしれなかった。開門の儀で姿を認めたとき無意識に唇が緩んだのを自覚した。
魔術師からの情報でまっさきに少年の名を知った。自分を犠牲にして守った子どもも生き残ったらしいが、なんの接点もなかったから呆れてしまう。守られた子どもが、完成形になっていたのには驚いたが。
そんな孕み腹にももうすぐ偽子宮ができる。何度も確認しているからわかる。毎日抱いても緊張が抜けない腹に、わずかなしこりができている、偽子宮の兆しだと。しこりがもう少し大きく成長し、やがて体内から甘い香りが漂えば偽子宮が完成した証だ。
本来ある臓器の後ろにできるから、よほど注意深く調べなければ気づかない。さらに、子を孕まない核種胎の匂いはほんのわずかだ。獣人でも偽子宮に気づくものは少ないだろう。
いちばん香りが強いのは臍の下――正確に言えばしこりからで、ラシャドはいつもルトの腹奥の匂いを確かめていた。もうすぐだ。匂いが少しずつ甘く変わった。一日に、受け入れる子種が多いなら数日以内に完成する。
早く孕ませてやりたい。ラシャドは思わず気が昂ぶった。子を作るなど考えたこともなかったが、全神経を研ぎ澄ませたラシャドの本能が告げたのだ。あれを孕ませるのは己だと。
自分が注ぐ子種で、滑らかな白い腹が膨らむ姿を想像し、ラシャドは今すぐ後宮に行きたくなるのを自制した。
「あー、早く、俺の子を孕ませてぇな」
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