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「俺はふたなりのガキには興味なくてね。そのガキが誰に孕まされようが、構やしねぇ」 「ほぉ。では他のガキとやらには興味があるのか? 昨夜は、低能な孕み腹が逃げ出したそうだが。なんとも浅はかなものだ。今頃はトゥラドーラの拷問に、悲鳴をあげているだろうな」 「だぁから。俺はそんなバカは相手にしませんって」  呆れを含ませてラシャドが訂正する。ラシャドの反論を受け入れず、両目を尖らせた皇帝が矢継ぎ早に告げた。 「わからんぞ。人間など低俗な生き物だ。お前の孕み腹が、拷問を受けていたらどうする。トゥラドーラの責め苦に耐えられず息絶えても、余は捨て置くぞ。もしくは死体を後宮の城壁に吊るし上げ、さらし者にすればよい見せしめになるか」  冗談に聞こえない残酷な言い分に愉快さを乗せ、皇帝が低く笑った。皇帝が口に出せば現実になる。  ここまで言われて否定も肯定もする気のないラシャドは、口角をあげるだけにした。ムイック隊長はとたん無表情になり、反対に、グレンが困ったように嘆息する。  ひとり妙案だと、物騒な笑みを浮かべた皇帝が続けた。 「それにしても……たかが孕み腹にお前がそこまで入れこむとはな。信じられん」  それとなしに不快感をちらつかせた皇帝に、グレンは今度こそ大きく頷いた。皇帝の前では一人称を改めながら、興味深げに口を開く。 「そうでしょう陛下。私も不思議でならないのですが、どうやらラシャドは本気で子を孕ませたいのかと」 「どんな具合の腹かなど興味もないが。次はお前の子を孕んだと、報告を受けるのかもしれんのか。煩わしいことだ」  子を孕ませた獣人に、宮殿を与えるのは皇帝の役割だ。いちいち孕み腹の報せを持ってこなくても、グレンか、もしくは孕み腹の管理に長けた老臣が、宮殿を適当に割り当てればいいものを。  小言をもらす皇帝の傍ら、グレンは楽しそうに目じりを下げた。 「陛下、二日後に、ツエルディング後宮で警護に当たるのは私です。そのときに、ラシャドの相手でも覗いてこようかと」 「うるせぇ、もういいっ。グレン、くだらねぇことをごちゃごちゃ陛下に聞かせてんじゃねぇよ。陛下、孕み腹が気に食わないからって、俺にねちねち小言をいわないでくれ。そんな話なら御免被る。ムイック隊長も、いちいち形式を取らなくても、陛下と二人で好きに処罰したらいい」

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