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「よし、完全に出来上がってんな。見込んだとおりだ。今日が、いちばんのあたり日だな」  満足そうな声音にひゅっ、とルトの喉が収縮した。嘘だ、嫌だ、嫌。ルトの顔色がさっと変わった。あたり日とは、やはりそういうことだろうか。ルトの腹にあるしこりは偽子宮なのか。  信じたくない、認めたくない。ひどすぎる。足の先まで身体を強張らせたルトの尻に、ラシャドの太い指が伸びた。 「ひっっ、あぁっ、や、嫌……ッ」  いつもはほぼ無抵抗で抱かれるルトは全身で拒絶した。両足を大きくばたつかせ、ラシャドの指が侵入するのをなんとしてでも防ごうとずり上がる。気丈な紫水の瞳が、明確な怯えを見せた。  突然暴れ出したルトに、ラシャドが苛立った声を出した。 「ちっ、暴れてんじゃねぇぞ。なんだってんだ、急に……っ」  いったんルトの尻から手が離れ、細い手首をまとめて片手で押さえつけられた。ラシャドの漆黒の両眼が、ルトを真上から見下ろす。滲む視界で互いの瞳がかち合った。  拒絶を許さない強い視線は恐ろしい。だが子を孕まされるのは、跳ねあがった心臓がすくんでしまいそうな戦慄が走る。がたがた震え出したルトに、驚きを浮かべた漆黒の瞳が見張られた。 「おい――?」 「ぃ、や……」 「あ?」  どうにか小さな声を絞り出す。よく聞き取れなかったのか、言葉の意図が掴めなかったのか。不機嫌さを隠さない訝し気な声が落ちた。 「何だって?」 「い、嫌……。子どもは、嫌。は、孕み、たくな……っ、ゆ、ゆるして、もうやめて」  許して、お願い、やめて。身動きひとつできずにルトが懇願し続ける。無駄とわかっている懇願は滑稽に映ったのだろうか。目を見開いたラシャドは息をのむ。しばらく無言になって、涙が盛り上がるルトの、潤みはじめた紫水の瞳をじっと覗いた。 「……聞けねぇな」 「いやあぁぁ」 「俺が今ここで種付けしなくても、偽子宮が完成したお前は、今日必ず、獣人どもに子を孕ませられるんだ――諦めろ」  傲慢に言い終わるや否や、ラシャドの太い指がルトの尻に勢いよく突き刺さった。 「ぁアっっ! っんぅ、ぅくぅっ」

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