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 静かに涙を流すルトに、大きな体躯が重ね合わさり熱い吐息を紡がれる。ラシャドの手がルトの薄い腹に添えられて、ぼてりと膨らんでゆく腹を撫でさすった。 「ここで育てろ。お前は、俺の子を産むんだ」  静かな低音が、耳元で残酷に告げた。 *** 「ルトー? どうしたの、調子悪い?」  獣人の出入りが少なくなった夜だ。食堂で与えられた夕飯を取っていたルトは、隣に腰かけるパーシーに覗きこまれた。  エミルより少し少年らしさが抜けた、目がぱちんとした小奇麗な顔造り。焦げ茶色の眉が寄せられて心配そうに目配せされた。ルトは慌てて取り繕う。 「なんでもないよ、ごめん。ちょっと疲れてて」  とっさにそれらしい言い訳を口にすれば、パーシーが戸惑い交じりの笑みを浮かべた。 「そぉ……? 疲れてるんなら、今日はエミルのとこに行くのはやめる?」  今日はパーシーと、新たに知り合ったラザとユージンと一緒に、エミルの宮殿に行く約束をしていた。孕み腹の宮殿には獣人たちは近寄らない……よう。それが最近になってわかってきた。  子を孕んだ自分のモノに、他の獣人の匂いがついたらいい気はしない。前に聞いた会話がよぎる。話をしていた獣人たちも、エミルの宮殿には近寄ろうとしなかった。ルトにはわからないが、獣人同士で暗黙のルールでもあるのかもしれない。  獣人が減った時間を狙ってエミルの宮殿に隠れて行く。なかなか大変だが、おかしなことに、ほんの少しだけルトたちを気楽にさせた。男前な性格のユージンは、こうなったら逃亡ごっこのスリル感を楽しんでやると息巻いていた。  今日はエミルのところにも、昼間すでに朱華殿へ父親が通い終わったと聞いた。チャンスだった。  逃げ出したトンミの影響で、活気がなくなったパーシーたちと遊ぼうと空き缶も用意した。ルトはぎこちなく頬を緩め、首を振った。 「大丈夫。俺もエミルの顏みたいから、一緒に行こう。それにそんなに疲れてないよ、ちょっと、ぼーっとしてただけで」  パーシーを心配させまいとしらを切ったルトだが、本当はとても身体が重たかった。  朝に数十分と続くラシャドの射精を受け入れてから、何時間がたっただろう。腹に収まりきらない大量の精液が零れないように、ルトは次の獣人に呼び出されるまでアナルプラグを挿入された。  部屋に置かれた棚から、ラシャドがひとつの淫具を手に取ったのだ。ラシャドにオモチャを使われるのは初めてだった。が、見たこともない凶悪な形にルトは大いに怯えた。

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