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 子種の見当がつけば獣人を呼び出して、獣人側の遺伝子と照らし合わす。この時点でほぼ父親が確定しているのだが、念には念をと、査察する魔術師は交尾をさせるのだ。  口腔から食道と気道が分岐するように、ひとつの肛門から二手に分かれて偽子宮が完成する。完成した偽子宮への道は通常なら閉じているが、獣人の精子に反応して道を開く。父親となる精子で、種が活性化するのだ。甘い香りが強まり核種胎の力が増す。  査察を確定させるため、仕方なく、魔術師に見張られながら交わってみせた。けれどそんなことをしなくても確信があった。  偽子宮の大きさや形、腹部を触って感じる胎の柔らかさ。すべてが孕む頃合いだった。立場をわからせるため、泣いて嫌がる身体を押さえつけて苛立ち紛れに抱いた、あのときに孕んだのだと。  ただでさえラシャドの射精は長く大量だ。それだけで確実に孕んだだろうがアナルプラグまで挿入した。そういった趣向はあまりしないが、万が一、他の獣人の子を孕んだら。そう思うと苛立ちが増して使わずにおれなかった。  大量の子種を体内に留め置けば、なおさら孕む確率が増す。それだけのために使用した玩具だったが、そのせいでずいぶん苦しんだようだ。次に呼び出したとき、玩具は使わないでと、泣きながら訴えられてしまったのだが。  だが、一日に何人もの獣人の種を受け入れる腹だ。たとえ行為を途中でやめたとしても、ルトは必ず、あの日に誰かの子を孕んだだろう。  他の奴らなんぞに孕ませたくなかった。決して。いちばん最初に孕ませたら誰の子を孕もうと関係ない、そう思っていたはずなのに。  気丈で限界まで泣かないルトが、孕みたくないと顔をぐしゃぐしゃにして涙を流す。小さく震える存在を腕のなかに囲いこみ、他の誰にも渡したくないと思ってしまったのだ。  嗜虐性癖の獣人にいたぶられたのをひどく混同していたから、柄にもなく庇護欲が頭をもたげたのかもしれない。もしくは、日常茶飯事に少年を犯す歪な空間で、精神の一本の軸が歪んでいたのかもしれない。あるいは血塗れに染まった両目で見る景色が、ラシャドの視界を曇らせていたのかも。

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