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ルトの中で太い根元が隆起し、責め立てる動きを止める。おびただしい精液がルトの中に溢流した。放出の間、ラシャドは片時もルトを腕の中から放さなかった。がんじがらめに抱えたルトを、背後から挿入したままベッドに横たえる。
「ルト……」
過激な性交に気を飛ばしたルトの黒い髪を、武骨な指先が撫でた。小さく身じろいだルトは、夢うつつに、蕩けた瞳でラシャドを見つめてきた。
「――レ、ン、さ……」
手にした香油をお守りのように握り締めたルトが囁く。己の下で組み敷かれ、安心して瞼を落としたルトに、ラシャドの唇が皮肉に曲がった。
「俺と、お前と……グレンと。三人でやってる気分だ」
低く唸ったラシャドの呟きは、安らかな寝息をたてるルトには届かなかっただろう。
***
国軍に属するラシャドが帝王の従兄弟の姻戚を襲撃した。
前代未聞の醜聞が露見し、エスマリク宮殿の執務殿で皇帝の叱責が飛んだのは、一夜が明けてからだった。
ディートリヒ殿下は王宮で暮らしていない。譲渡された帝都の地で、王宮に準ずる宮殿を構えている。それなりに距離があり、早すぎる報せだった。殿下の使者とともに届いた上奏を皇帝が握りつぶす。
「ラシャドを召せ! 今すぐにだ!」
「陛下、お静まりをっ」
怒りを露わにする皇帝を目の前に、グレンは両膝をついた。従わないグレンに黄金の瞳が冷たい視線を飛ばす。振り返りざま、日光を浴びて金色に輝く髪が、獰猛なたてがみのように見えた。
「静まれだと? 誰に向かって言っておる。今朝の早馬でディートリヒから報せを受け、奴の侍従から遠回しに散々なじられたぞ。ラシャドは余に恥をかかせたのだ。あろうことか、余の精鋭兵副隊長が皇族の身内を襲い、傷を負わせるとは!」
「陛下! ですが、皇族の親類とはいえラシャドにも分があります。ラシャドの孕み腹が暴行を受け、命を落としかけたのです」
「それがどうした! 使い腹など捨て置けばよいものを。我らの子を孕む腹はいくらでもいる。たかが人間ひとりに振り回されおって、余の面目が立たぬわ! グレン、もしやそなたも関与してはいまいな!」
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