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「ラシャドが罰を受けたんだ、とにかく寝台に運びたい。案内をお願いする」
「わかりました」
話はその後でと言われ、気を取り直して頷く。体格のいいラシャドを移動させるのは大変で、非力なルトも懸命に手伝った。ほぼほぼグレンが担いでいたのだが、ラシャドをベッドに寝かせる頃には息が上がった。
力のなさを自覚してグレンを見れば、グレンも荒い息をついて寝台の端に腰かけている。服の上からでもわかるほど胸を大きく上下させて、流れる汗をぬぐっていた。
「助かった、ありがとう」
「そんなこと。それより、どうしてこんな……」
たしかに様子はおかしかった。それでも今朝、紫苑殿を出るまでは元気だった。よほど危険な任務をしてきたのだろうか。紫水の瞳を何度も動かして、寝台に身を置くラシャドとグレンを交互に見た。不安と動揺に、胸元を握り締める。
ルトの困惑を受け止めたグレンは、大きく息を整えてラシャドが横たわる寝台をぎしりと揺らした。寝そべるラシャドに近寄っていく。グレンの片足が寝台に乗り上がり、すらりとした頑丈な体躯は、ラシャドを真上から見下ろすように接近した。気を失ったラシャドの服に手をかけ、力任せに、きっちり着こむ軍服を引き破った。
「ど、どうし……」
予想外の、乱暴なグレンの行動に驚き目を白黒させる。複雑な形の釦がいくつもはじけ飛び、ラシャドの逞しい胸板が露わになった。上等な服に覆われた肌が暴かれるのを見て、即座に息をのむ。
厚みがあり、硬いはずのラシャドの皮膚は、ぼこぼこと真っ赤な跡を残している。上半身全体が大きく腫れ上がり、焼けただれたみたいだった。鋭いもので皮膚を裂かれたように血を流す箇所もある。それも一つや二つではない、数えきれないほどの痕だ。
剥き出しにされた素肌から、白いシーツにどろりと赤い血が滴る。顔色を変えてルトは口元を覆った。一気に漂う血の匂いに咽そうになる。
「ひどい。なんてことを……いったいどうして? 何があったんですか」
「……皇族に連なる獣人を襲ったんだ。故意にけがをさせて、罰を受けた。罰せられた傷は魔術師が治癒するのを禁じられている。すまないが、手当てを頼みたい」
「皇族に関わる獣人を襲った?」
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