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「陛下は、獣人の性質が高いんだ。その陛下に頻繁に精液を注がれたら……核種胎が実るのが、早くなんだよ」  核種胎が実る……つまり偽子宮の形成が早いのか。ラシャドの意図を察し、ルトは息をのんだ。偽子宮ができた人間は必ず子を孕む。  声を失くして真っ青になったルトに、ラシャドが安心しろと、なだめる態度で唇を寄せた。 「まだそこまでは熟れてねぇ。陛下に呼ばれてんのはどれくらいの頻度だ」 「だいたい二、三日に一度」 「……それだったら、熟すまではもう少しか……?」  二回目の核種胎を入れられてまだ一週間ほどだ。このまま皇帝が飽きればよし。ぶつくさと考えこむラシャドは、ルトを抱きしめたまま動かなくなった。  獣人の性質などルトにはわからない。けれど、皇帝がその気になった腹を試そうと、ルトが一日で呼ばれる回数は格段に増えた。ルトに注がれる子種も多く、いつ孕んでもおかしくない。  ラシャドの腕に包まれながら不安を抱えてうつむく。じっと息をひそめていたが、後ろにあたるラシャドの陰茎は昂ぶったままだと気づいた。  このまま背後から挿入されるのかと考えたけれど、ラシャドはうつむくルトの首筋を柔らかく食むばかり。気になって、ルトはもう一度背後を覗いた。 「あの。しないんですか?」 「してほしいか?」  間髪入れない返しにルトが慌てて首を振る。しなくていいならしないほうが楽だ。肉体的にも精神的にも。そんなつもりはなかったが、自分から性行為をねだったようで焦った。青くなったり赤くなったりのルトの様子に、ラシャドが小さく笑った。 「冗談だ。しねぇよ。一発出してすっきりしたろ。少し寝とけ。顔色が悪い」 「え」  思いもしないことを言われ、ルトは開けた口を閉じる。色事に不慣れで、たった一回射精しただけなのに、ルトの腹奥はずんと重い。  気だるさを残す行為ですっきりしたのかはわからないが、これではルトが奉仕してもらっただけだ。何もしてないラシャドの昂ぶりが気になる。 「でも」 「いいから。陛下の伽であんま寝れてねぇんだろ。夜までまだ長いんだ。この後も休みなしだろ、少しでも休め。あんまり長ぇ時間動かなかったら、魔術師が来ちまうからな。さっさと寝ろ」  ルトの言い分を遮り、ラシャドはぐっと腕の中にルトを閉じこめた。温かな腕の中で、ルトは行為の疲れもあって次第に瞼が重たくなる。完全に眠りにつく前にどうにか口にした。

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