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「許さぬ、決して。すべては人間の業が成したこと」 「だから……今俺たちが、獣人から受ける仕打ちは、当然の罰だと?」  獣人と魔術師と、人間と。それぞれの根底に潜むものに、深く思考を巡らせる。確かに、ルトが思うほど人間は綺麗なだけの存在ではなかった。祖先の身勝手な報いは、隷従国となって跳ね返った。  バーラ狩りに出たら二度と帰って来られない。それを承知で我が子を差し出す。生け贄のように。泣く泣く親元を離れた子どもたちがどれほどいたことか。  親兄弟は、未来ある少年たちは、異国の地でどんな苦難が待ち受けるかもわからないまま。時代に置いていかれた現代のルトたちは、なぜこれほど獣人が人間を憎むのか、成り立ちさえ知らされていなかった。人間が仕掛けた戦に負け、隷従国になったと聞かされるのみ。  所詮、憎悪から始まった行動は憎悪しか生まないのだ。その連鎖のしわ寄せは、何も知らず日々を必死に生きる、地位も権力も持たない子どもたちだ。  シーデリウムで何人もの命が奪われたか。たとえどんな思いが隠れていようと、傷跡を残す過去はこれから先も消えはしない。時が風化してくれるなんて出まかせだ。傷跡をなぞるたび、こんなにも痛む心がある限りは。 「何も知らない、名前も知らない少年たちが、ここに連れてこられた日に命を失くしました。そのあとも、実験動物のように核種胎を飲まされて、たくさん死んだ。毎日の暴虐に力尽きる少年もいる。それさえも、当然の報いと言い切るのですか? みんな、何も聞かされずに、何もわからないまま、恐怖と苦痛のなかで命を絶たれました。それさえも」  罰だと言い切るか。罪などなかったのに。もし罪があるとするなら、何も知らなかったことだけだ。  獣人たちの圧倒的な支配力に屈し、自ら関わろうとする勇気をもたなかったことだけ。けれど身分も地位も力もない少年に、何ができたというのだろう。 「俺たちは……、少なくとも訳もわからずこの国に連れてこられた人間たちは、きっとみんな、ただ平穏に生きていたい、それだけを願った。でも、獣人たちは踏みにじるばかりです」  生き殺しだ。歴史の報いという一言で済ますには重すぎるのだ。人間が虐げられる時代が長すぎた。  やがて恐怖は怒りとなり、悲しみは憎しみに変わる。決起するのはたいてい虐げられたものたちだ。

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