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第二十一話 壊れゆく心(残酷描写あり、※途中前置きあり
ちゃぽんと音がしそうな重い腹をさすり、苦しさに溜息を吐いた。明け方の薄暗さを道明かりに、寝所へ続く先を進む。足を動かすたび皇帝の子種が腹の奥で移動した。
皇帝は何を考えている。今夜で四日連続だ。ルトの癒しを知ってから、夜伽の後は必ず力を注ぐよう命じられる。荒ぶる獅子の眠りが、穏やかな寝息に変わるまで。
力を使うのは痛くもかゆくもないが、激しい行為が尾を引く。安らかな息遣いに誘われて、疲れ果てたルトも、いつの間にか眠ってしまう。
豪勢な寝台で意識を取り戻し、早朝にツエルディング後宮に戻る。この四日間はその繰り返しだった。
ルトたちの寝所までの道順も覚えた。とはいえ王宮の敷地内だ。皇帝が住むエスマリク宮殿から孕み腹の後宮に戻るには、ゆっくりしたルトの足では一時間以上かかる。
今にも倒れそうな身体に鞭打って、やっと後宮内へたどり着いた。休みなく大浴場に進み、汗と体液をさっと流す。
磨かれた広い通路を渡り、縦長の寝所に足を踏み入れた。一面の壁にある埋めこみ式の棚の上方で、遠慮気味にともされた灯籠が等間隔で淡く光る。柔らかな明かりを頼りに、ようやく寝台に潜った。
エミルのほうを向いて横向きになり、ひとときの安らぎを貪る少年たちの寝息に包まれる。ほぅ、と息をつけば、安堵から睡魔に襲われた。意識が遠のくのを感じ重い瞼を閉じる。
しかしようやく手に入れた浅い眠りは、唐突に現れたひとりの魔術師に遮られた。
「整列しろ!」
寝静まる寝所に大声が響き渡った。瞼を上げれば、寝所は早朝の薄暗さを残す。ルトが寝入ってからそう時間はたっていない様子。
太陽だって居眠り中だ。なのに叩き起こされたルトたちは寝台から飛び起きた。けだるさを色濃く残す少年たちを眺めた魔術師が、つかつかと目の前に来る。ルトの目の前に。
「アメジストが足環。お前をアトラプルム館へ連れていく」
「今? どうして俺を……?」
重い瞼を持ち上げて、ルトは目の前に迫る魔術師を見上げた。こんな時間に、なぜそんなところへ。アトラプルム館なんて、ルトが子を孕んだときしか行ったことがない。獣人や孕み腹の情報を総括する管理塔だ。
そこまで意識を浮上させたルトは、冷水を浴びたように青白くなった。
「まさ、か……」
つい先ほどまで伽を務めただるさなど一瞬で吹き飛んだ。顔色を失くし、足環を覗こうとしたとき魔術師が単調に言った。
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