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 一瞬の動きがとてつもなく緩やかに感じたとき、どさりと音を立てて背中から転がる。反射的に閉じた瞼を開けてみれば、ただでさえ丸見えの空間は、上方にも人が通れる通路があった。ルトの様子はどこを歩いても観察できる構造だ。  あちらこちらと視線をさまよわせたら、ガラス越しに室外を歩く数人の魔術師たちと目が合う。なかには足を止めてルトを見るものもいた。いまだ混乱する思考を抱きしめるように、できるだけ裸体を縮こませて身を隠す。  魔術師に囲まれた向こうから、小柄な魔術師が慌てた様子で近寄ってきた。試験管立てを手にし、数本の試験管をひとつ取って横たえられたルトへ突き出す。 「おいまだ押し倒すなよ。先に、ここに唾液を採れ」  細長い試験管を差し出され、促されるまま唾液を垂らす。中身を確認した魔術師は満足げに頷き、検体を試験管立てに戻した。だがすぐさま新たな試験管が目の前にきた。 「これはお前の、精液用」  透明な試験管を楽し気に振り、今度は違う魔術師がにやにやと寝台に乗りあがる。咄嗟に身を引けば、足首に繋がれた鎖がじゃらじゃらと硬質に響いた。 「やっ」 「逃げるなっての、とっとと足広げな」  御開帳ぉ、とふざけたことを言いながらルトの両足が開脚される。残る魔術師は、仲間の悪ふざけに肩を竦めるが止めようとしない。魔術師たちの、幾つもの目線がルトの性器に集中した。  獣人ではない、見た目は同じ人間の姿をした魔術師の視線に羞恥心が煽られる。耳まで赤く染めたルトに、複数のせせら笑う声が聞こえた。 「あらら。ずいぶんとちっちゃいおちんちんだ。縮こませちゃって子どもだね、ちゃんと勃起させろよ?」  ひょうひょうとした魔術師はそういうと、小さい性器に手を伸ばした。足を閉じようとしても、いつの間にかひとりの魔術師が背後にいる。  後ずさる裸体の退路を阻まれ、背中から回る大きい両腕で、膝裏をがっちりと掴まれた。膝を大胆に割り開かれて浮いた尻を固定される。  今度は左右にいる魔術師が、突き出た丸い尻肉を両方から引っ張り広げた。 「ひ……っ」  隠されたルトの秘部を冷たい空気が撫でる。慎ましく閉じる蕾に、誰かの指がぬめりを伴って押し入ってきた。早朝まで使われたルトの内部は、ぬめりを借りて見る見る間に太い指を飲みこんでいく。  さっきまで皇帝を迎え入れた腹奥は、擦られすぎて敏感になったのかも。長細い指が中を押し進むたび、狭い粘膜がきゅっと動きを追って締めつけた。  股の間がぬちょぬちょとベタつく。次第にルトの股間から、蜂蜜に似た香りがたちあがった。ルトの体温で蕩かされたのだろう、甘い香りが。 「んぁっ、ひ…っ、あぁ……っ」

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