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背後で短い唸り声が聞こえ、突き上げの体勢が変わった。再び後ろから寝台に押し倒される。うつぶせで中をえぐられ、衝撃で少しずつ動くルトの身体は、寝台の端へずり上がった。
伸しかかられ、突き上げられ、息が苦しい。シーツに伏せる顔をあげれば、瞳の先で、窮屈そうに膨らんだ獣人の逸物があった。それが誰のものかなんて、目線を上げて確かめる余裕はもうなかった。
「あぁっ…、あ……ッ、ン、ンン……っ」
「ルト……」
頭上からグレンの熱の入った声音がする。朦朧とする意識のなか、ルトは、目の前ではち切れそうに隆起する陰茎が、グレンのものだと意識した。グレンが、ルトで、欲情している。
そう思うと、ルトの腹の底がほのかに熱を持った気がした。ルトの奥が、切なく振動し、体内にいる雄を締めつけた。
「は……ッ」
皇帝の熱い吐息がルトの耳元をかすめる。腹の中で皇帝が弾けるのを感じ、ルトは意識を手放していった。
***
幸せな死の誘惑と、エミルたちの苦痛と。命の天秤を迫られて、ルトはかろうじて持ちこたえた。それでも元通りとはいかない。ルトの意思に反し、孕み腹の点検は増えてしまった。そのたびに、魔術師の回復術で体力を補われた。
グレンに伽を見られてから四日が過ぎた。昨日は一晩中ラタミティオ塔で休んだところ。四日ぶりの伽を済ませ、おぼつかない足で、ツエルディング後宮の寝所に向かう。恐ろしく長く豪華な廊下を、ふらふらと進んだ。
夜明け前の薄暗い周辺は物音さえしない……はずだった。皇帝から解放されて、気が緩んでいたのか。それとも、ルトの意識がぼんやりとしていたか。おそらく両方だっただろうが、誰もいないと思った柱の陰から、見知らぬ獣人がこちらをじっと見つめていた。
薄ら暗い闇夜のなかに二つの瞳が浮かぶ。細い身を舐めまわす視線に不穏な空気を感じ、ルトは進む足を止めた。
「だ、だれ……」
「これはこれは。麗しい皇帝陛下の、気に入りの玩具様じゃねぇか」
ルトより二倍はある体格の獣人が目の前に迫る。獣人の耳は小さく、鼻の頭に角のような瘤がある。サイの獣人だった。ルトは顔を青ざめて後ずさった。
軍服ではないが、ラシャドと似た作りの護衛官の装いだ。宮殿を警護する役人かもしれない。大きな獣人は、にやつく表情を隠さず、一歩一歩ルトに近づいた。
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