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 臣下の礼をとり、ひれ伏す罪人たちを冷たく横目にする。整列した隙間を抜け、中央に座る皇帝の前に進み出た。 「申し上げます、陛下。このものらが、帝王の宮殿を脅かしたのは揺るぎない事実です。ですが、このままでは孕み腹を利用し、論争をずらし言い逃れをするばかりでしょう」  いったん間を置き、伏し目がちに前を見上げる。顎を引いた皇帝が、無言で先を促してきた。これから発言する内容は、きっと嵐どころではない。  シーデリウムの根幹を揺るがす激震となるだろう。それを理解したうえで、固めた強い意思を、唇に乗せた。 「孕み腹の、廃止をなさいませ」 「な……」  想像もしない発言に、皇帝のみならず集まる重鎮たちも言葉を失くす。予期せぬ爆弾を投下したグレンを、皇帝が鋭く睨んだ。一気に静まりかえるなかグレンはさらに続けた。 「このものらの言い分も一理あります。どこにいようと、誰であろうと獣人は孕み腹を使う権利があり、子を成す行為を認められております。ゆえに、厳罰はできませぬ。なれども元凶となる孕み腹さえこの国からなくなれば、このものらも、もはやくだらぬ言い逃れなどできますまい。大陸に君臨する皇帝陛下の宮殿を騒がせた己が重罪と、早々に諦めがつきましょう」 「なりませぬぞ!」 「陛下! 側近とはいえ、グレン殿の妄言に惑わされぬよう。孕み腹を廃止するなどと馬鹿げたことを」 「孕み腹を廃止すれば、国中の獣人が不満露わに宮殿へ圧しかけてきますぞ!」 「断じて受け入れられぬ!」  四方から臣下たちの反感が交差する。あちらこちらが騒然とするなかで、ただひとり、それらの声を振り切った獣人がいた。 「申し上げる! 側近、グレン殿の進言に賛同する!」  あまりの事態に混乱を期し、整った列が乱れる。獣人たちは身振り手振りで反論を重ねる。その合間を縫って、軍服を着た獣人が一礼してグレンの隣に並び立った。  グレンははっとそちらを振り返った。そこには、口角をわずかに上げたラシャドがいた。漆黒と、蜂蜜色の瞳がかち合う。一瞬だけ交わった瞳は拝礼とともに伏せられた。 「陛下。俺たち獣人は、決して子が生まれないわけではありません。孕み腹を使わなくとも、子孫は残せる。孕み腹は、もう必要ないかと存じ上げる」  説得するラシャドの言動に、新たな獣人がすかさず難色を示した。

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