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偉大な獣人王への誓いとともに、アドニスは国の行く末に祈りをささげた。荒ぶる魂が、どうか安らかな眠りにつけるよう。ここで血にまみれた怨念を断ち切れば、やがては呪われた血が消え去ることを願う。
誓いを刻む胸の奥で、誰にも譲れぬ、ある一つの決断をして。
***
皇帝の命を受け再び清宮殿へ集まったのは、論争が過ぎ去った五日目のこと。いよいよだ。孕み腹の撤廃に、皇帝が決断を下す時が来た。顔ぶれは前回と同じ。緊迫感で静まり返る殿内に、グレン、さらに四人の官長と二人の魔術師が待機する。
沈黙して動きを止める臣下へ、王座に腰を置く皇帝が、厳かに口を開いた。
「結論を下す。一つ。孕み腹を盾にとり、余を軽んじる言動は断じて許さぬ。己の本分を忘れ、余が住まう宮殿で淫行にふけるとはなんという体たらく。だというのに己が罪を顧みず、孕み腹を逆手に余に抗弁を垂れるとは。孕み腹は確かに、遠からず我が国を堕落させるだろう。よって余の御代で孕み腹を撤廃する」
皇帝の勇断に胸を撫でおろしたのは、グレンとコルネーリォだけだったろう。集まる官長たちは動揺し、拝礼したまま焦りを顕著にする。ざわついた空気は感じただろうが、皇帝は揺るぎない厳格な声音で、次の結論を続けた。
「二つ。撤廃に伴い、ツエルディング後宮に登録する我が民衆を黙らせるには、空、地、水を統一する各種族長の助力がいる。族長らを納得させるには、孕み腹に並ぶ人間の隷従の証が必要だ。証はヌプンタの王族の婚姻を以って、孕み腹の代わりと成す。外交官長は迅速に、ヌプンタとの条約を進めよ。宮廷魔術師は、新たな核種胎の開発を急げ。それが孕み腹を使わずとも、祖国が繁栄を遂げる確約になろう。次の族長らの会合まで三ヶ月あまり。撤廃の噂をかぎつけた民衆が暴れだす前に、何としてでも完成させよ。一等級コルネーリォ・ヴェナンツオに任命する」
「御意」
指示を受けたコルネーリォが、前に進み出て深く拝礼した。皇帝の決意にグレンの内心が喜びに震える。しかし次に続く内容に、目を剥いて顔をあげた。
「三つ。余が召し抱えた孕み腹には、褒章ではなく妃の位を授ける。本来なら側妃であるが、獣人と人間の身分を鑑み、孕み腹には新たな地位となる番の妃を設ける。外交官長が、ヌプンタと条約を果たしたときに送られる人間の王族は、皇族ディートリヒと婚姻を結ばせる」
「陛下!」
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