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第25話
「このままでは……」
一つの国に、二つの政権
「ドイツは、」
「内乱状態になるね」
互いに覇権を巡って、国民同士が戦う事になる。
「だが幸いと言うべきか。大きな衝突は起こっていない。今のうちに止めなければ」
操縦桿を握る手に力が籠もる。
「軍は動いていないのですね」
「あぁ。今は双方睨み合いの状態だ。動くには大義がいる」
大義がなければ後世、歴史のそしりを受ける。
「それに同じ国民同士、戦いたくない」
「そう……ですね」
正しい言葉を美辞麗句で着飾って戦争は振りかざすけれど、血を流し、命が零れても正しいと言える拳が存在するのだろうか。
「止めましょう」
「そうだね」
夜の帳が降りた。
菫の雲の上を機体は進む。
「計器に異常はないようだね。私が代わろう。君は仮眠を取ってくれ」
「でも」
「私からのお願いだよ。休める時に、少しでも休んでほしい。君の力が必要な時に、力が十分に発揮できなくては困るよ」
「ありがとうございます」
隼―改に乗る前に、大佐には操縦の基本と性能を伝えている。
気流の安定した空なら問題ない筈だ。
「おやすみ、ソーマ」
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