37 / 39

第37話

 静寂を打ち破る声。  拳が高く突き上がった。 「Treueeid Preußen(トロイエアイト プロイセン)!」  拳が天を突く。 「Treueeid Wildbad(トロイエアイト ウィルバート)!」  次々に拳が振り上がる。  Treueeid Preußen!  トロイエアイト プロイセン!  Treueeid Wildbad!  トロイエアイト ウィルバート!  Treueeid Preußen!  トロイエアイト プロイセン!  Treueeid Wildbad!  トロイエアイト ウィルバート!  オオオォォオオオオー!!  拳が空を埋める。  歓喜の声が雪崩れて押し寄せる。  俺にも分かる。言葉の壁があっても、この熱気、この怒号にも似た歓声。  天を衝くあまたの拳。  ドイツ軍が大佐を賞賛している。  Treueeid Preußen!  トロイエアイト プロイセン!  Treueeid Wildbad!  トロイエアイト ウィルバート!  大佐の背中がフルリと揺れた。  ハッとして息を飲んだ。  こんな大佐の顔、見た事ない……  敬礼の姿勢は崩さずに、唇を噛み締めて……  俺は大佐に何を語りかければいいのだろう。 「私の国はドイツ。共和制の国だ。プロイセンなんて国は世界に存在しない」  俺に語りかけてくれたのか……  ひとり己に言い聞かせたのか……

ともだちにシェアしよう!