7 / 8

いっときの幸せを掴んだ気がした7

「だって僕、君とセックスしたいって思って話し掛けたから」 「えっ……?」  思わずアキラからぱっと離れ、その顔をじっと見た。  いやらしさなどこれっぽっちもなく、堂々と自分の言ったことは合っている、と宣言するような笑みを浮かべている。これはまるで誘惑だ。  俺は予想外の言葉に、返す言葉が思い付かない。それと同時に、鼓動が速くなっている自分に焦る。 「……あれ、そっち側だと思ったんだけど、違った?」  俺がいつまでも話さないせいか、アキラから問い掛けられる。  黙ったまま首を横に振り、視線をアキラから逸らす。  アキラが言った通り、俺は男しか恋愛対象として見られない。だが、大っぴらに口にするつもりもないし、そのような雰囲気を出しているつもりもない。ただひっそりと、普通の人に紛れ込んで一人の時間を過ごしているだけである。  どうしても身体が誰かを求めているときは、適当にその日限りの相手を探していた。最近は仕事のせいで無欲であったが。

ともだちにシェアしよう!