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番契約
心は恐怖を感じていても身体はΩとして喜んでαを受け止めている。滴るほどの蜜が溢れて床を汚す。
「ああっ……、もうっ……」
イキそうだと訴えると、桐生がはぁはぁと荒い息を繰り返して、「ふうんっ……んあ」と声を荒げた。
「ひっ……ひぃあぎゃぁぁああっ」
声を上げて仰け反った。
目の前が白くスパークする。身体中が痙攣する。
首に激痛が走って痛みにのたうつ。
腹の中に熱い物が放たれたのが分かった。
首にはまだ痛みがあって、グチュっという音ともに唇が離れたのが分かった。
『どさっ』
床に自分の身体が落ちた。
冷たい床。
すっと消える甘い香り。
Ωの発情期はαの性を注がれると落ち着く。
互いの荒い息が静かな部屋に響く。
「き……」
「事故だ。すまない」
僕の声を遮って桐生が謝った。
ガタガタと身体が震え出して、床の上で丸くなる。
「沢木?」
異変に気がついた桐生が慌てて起き上がって声をかける。肩に置かれた手を払って首を横に振ってさらに丸くなる。
謝れた。
事故って……。
Ωの突然のヒートによる事故。
僕は運命を信じたのに、桐生は事故という。
発情期はまだのはずだったのに、桐生にあった途端にヒートは起きた。
それは、Ωの本能が運命を感じたからと僕は思った。
桐生は立ち上がるとバスルームに飛び込んですぐに数枚のバスタオルを持ってきた。それで僕を包むと、「すぐに風呂に入れ」と言って抱き上げてバスルームに連れて行った。
なおも震える身体。
「立てるか?」
桐生に言われて横に顔を振ると抱えたままバスチェアに座ってバスタブのお湯のコックを捻って、続けてシャワーのコックを捻った。
熱いお湯が身体に降り注ぐ。
すぐにバスタオルは重くなって身体に張り付く。
「少し、我慢しろ」
桐生は僕の震える体を抱きしめたまま、今まで繋がっていた所に触れた。中に吐き出されたもの掻き出す。何度も指を出し入れされて、恥ずかしさと身動きのできない自分の痴態に俯いて耐えるしかなかった。
「溺れるなよ」
バスタブに抱えられたまま入れられて、桐生は僕をバスタブに肩まで浸からせて立ち上がるとすぐにバスルームから出ていった。
身体の震えは治ったが、ぐったりとして身体が動かない。
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