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動き出す運命
2年間必死で追い求めていたのだから。
それを僕は知っている。
「桐生様、無理強いはいけませんよ。ユキ様にはお子さんもパートナーもおられるんですから、2年も前のことをいつまでも引きずってはいけません」
もう、思いを断ち切って欲しい。
「そうです。2年も前なんです。もう、終わったことです」
葉山に言われたが、桐生は「俺は終わってない」と小さくつぶやいた。
意気消沈した桐生は項垂れている。
運命の番を信じたかった桐生。運命に囚われているのは同じだ。
気持ちはわかる。
「すいません。僕帰ります。彰も寝ているからこのまま連れて帰ります」
桐生の気持ちには応えられないということだろう。
いくら運命の番でも子どもがいては受け入れることはできないだろう。
相手のαは気にはなるが仕方がない。
「送りましょう」
寝ている子どもを連れて電車に乗らせるのは忍びない。それにこちらが無理矢理に引き留めたのだから。
それに、話したいこともある。
自分も行くという桐生に、「桐生様は駄目です。運命の番というのですから、ここで待っていてください」と桐生にはホテルで待っているように伝えた。
運命の番が側にいたら発情してしまう。『事故』を起こさないためにも2人を引き離さなければならない。
今だってうっすらと甘い香りがしている。
桐生から鍵を受け取って葉山のコートと鞄を手に取ると部屋を出た。
ホテルの正面から出てホテルマンに鍵を渡すと車を持ってきてくれた。
後部座席に乗るように促して、運転席に座った。
バックミラーに映る葉山は幼くも見える。だけど眠っている愛しくてたまらないと訴えている。
桐生が追いかけ続けた相手。
一夜を共のにしただけだと桐生は言っていたけど、確かに感じた2人のフェロモン。番がいれば他のフェロモンには動じないはずなのに。
「少し、時間をください」
葉山に告げて教えられた住所とは違う方向へと車の向きを変えた。
少し進んで路肩に車を停めた。
「私が、番だと桐生は話しましたね」
葉山は黙って聞いている。
「αの桐生は幼い頃からスポーツ万能で勉強もできて、人望もありました。私は高校からの同級生で、桐生に憧れたΩのひとりです。ずっと憧れて、彼についてきたんです」
こんなことを言ったら葉山は傷つくだろう。僕のこれまでの想いを知って欲しい。
渡したくないという想いはある。
だけど、桐生の傷ついた姿を見ているのは辛い。
他の誰かと幸せになるのを側で見ているのは辛い。
運命の番と引き離されて病んでしまうαやΩもいるという。
桐生の苦しむ姿は見たくない。
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