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動き出す運命

 ハンドルに突っ伏して、「彼の為に秘書の資格も取って、ずっと彼の側で支えてきました。あなたが出会った2年前まで、私は彼の運命の番だと信じていました」と、自分の思いを告白した。  勘違いも甚だしい。 「でも、あなたと番になったんですよね?」 「私たちが番になったのはあなたと桐生が出会う3ヶ月前です」  事故だと言われた。ヒートにな夜事故で、僕は桐生に謝られた。  謝ってなど欲しくはなかった。  間違いだと言われたも同然だ。 「私と番っていても彼は……あなたに惹かれて、夢中でした。探しましたよ」 「探したんですか?」 「ええ。でも桐生は忙しい身で。桐生は先程のホテルに出資している海外の会社の社長です。仕事が忙しくて生活のほとんどを海外で過ごしています。日本にいられたのは2年間のうち2週間もありませんでした。私は願っていましたよ。運命の番は私だって。だけど、あなたは見つかった」  引かれ合って惹かれ合う運命。 「運命を裏づけた」  私ではないと、運命の番は私ではないことを裏付けられた。 「運命の番は番がいても関係ない。運命に導かれて惹かれ合う運命です。都市伝説だって言われるけど、あなたはきっと桐生の運命です。こんな偶然で出会うはずがないんです」  声は少しずつ小さくなってしまう。  思いと現実は違うから。 「もしも、運命でも、僕はアキ……桐生さんのところには行きません。これまで通り、彰と一緒に生きていきます」  葉山の力強い声。 「運命は変えられないんです。きっと桐生はあなたを手に入れる」  その努力を私が一番知っている。側で見てきたから。 「桐生さんはあなたの番ですよ」  分かっているけど、もう、想いは断たれている。未来はないのだ。 「私は、桐生を自分の物にしたかった」  小さく小さくつぶやいた。  桐生に言えば優しい桐生は受け入れてくれるかもしれない。今の桐生なら、傷ついている桐生なら受け入れてくれるかもしれない。  だけど、自分は誤魔化せない。 「バース性は皮肉なものです。いくら想っても、番になっても運命には勝つことはできないし、逆らうこともできない。私は桐生に愛されてはいません。桐生の幸せを想うなら私が身を引くべきですね」 「そ、そんなことは無いです。僕は一度会っただけで……」 「その一度を桐生は大切にしてきた。ずっとあなたを追いかけて、想ってきたんです。運命に導かれて引き合う運命なら必ず出会うだろうって、桐生は信じていました」 「そんなこと言われても、僕は……」 「桐生は私の発情期やフェロモンに反応しません。他のΩにも。あなたに出会ったから。桐生はあなたを愛し続けるでしょう。それを私は見続けることはできない。あなたにもパートナーがいるなら同じじゃないんですか?」  子どもができるほどの間柄のα。番っていなくても妊娠するほどの相手。  僕が桐生を想うように想う相手がいるなら、桐生の想いもわかるはずだ。 「分からない」

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