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運命を対峙
だけど、本当に桐生は受け入れられるだろうか。僕を捨てて、誰の子どもかも分からない子どもを引き取って可愛がることはできるだろうか。
僕が争ってみても、葉山を手に入れるだろうか。
桐生を想う気持ちは変わらない。だけど、僕も運命を受け入れよう。
桐生と葉山が望めば僕は身を引く。
桐生の幸せを思うなら、僕が引くのが一番だろう。
2人を……試してみよう。
ホテルに戻って桐生を部屋に送って、「明日は別行動を取らせて頂きます」と告げると、「よろしく頼む」と言って桐生はドアを閉めた。
自室に戻ると早速葉山の身辺調査を調査会社に依頼した。できる限り細かく、相手のαにも繋がる情報も探して欲しいと伝えた。合わせてアパートの大家と不動産業者についても調べるように依頼した。
時間は明後日までしかないから、急いでもらうしかないがその時点までに分かった内容は逐一報告しておらうように連絡した。
翌日の昼までには葉山の子どもの生年月日やバース性、保育園についての報告と葉山の生年月日や両親、義両親、学歴、仕事についての報告が送られてきた。
しかし、相手のαについては分からなかった。引き続き調査を依頼して相手が分かればすぐに報告して欲しいと告げた。
体外受精や精子バンクも疑ってはみたが、どれも有力な情報は得られなかった。
葉山の調査報告を見ればとても真面目な人生を歩んできたことが分かった。
2年前に桐生と出会った時にはやはり、桐生家の会社と関係ある職場だった。その半年後には職場を変わっていて、パートやアルバイトを転々としている。彰は1歳7ヶ月のα。数日前に転園している。元の保育園も現在の保育園もバース専門の園ではない。アパートは学生時代から住んでいることは分かったが、知人が出入りしているのは美容師をしている従妹のすずだけであることが分かった。
そこにもαに繋がるものはわからなかった。
なんとか取り寄せた彰の戸籍には父親の欄には名前はなかった。
『ユキを俺のものにできないだろうか』という桐生の声が耳から離れない。
約束は3年だった。見つかれば身をひくと約束した。僕の今後も補償してくれると約束されている。
僕の運命も探す努力を桐生はしてくれた。
葉山には他にパートナーと思われるαがいる。だけど、待遇や処遇をみても放置はできない。相手のαを話し合って葉山をこちらに譲り受けることはできないだろうか。
そうすれば桐生と番うことも可能なんじゃないだろうか。
葉山の気持ちもあるだけど、惹かれ合う運命なら、葉山だって桐生を悪くは思わないだろう。
2人が番うことができたら僕は運命を受け入れよう。
僕は桐生の運命じゃない。
長い片思いに終止符を打とう。
もしも、葉山が受け入れなくても、僕は番を解消してもらう。
桐生から離れよう。
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