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辻褄合わせ

 葉山が桐生と番う。  僕は番を解消される。  僕の両親は『事故』でも桐生と番うことには両手を上げて賛成していた。だから今回のことで番を解消されることは猛反対していた。僕だって番を解消されるのは不安がある。発情期が再発するだけじゃない。絆が深ければ精神を病むΩもいるという。一度解消されたΩは2度と番うことはできない。最下層のΩに落とされる。それを両親は心配足ていた。  発情期が一生続く。発情期中は誰彼構わず求めてセックス以外のことは何も考えられなくなってしまう。そんなΩは仕事につくこともできずに身売りをする輩も多いのだ。  桐生は僕の両親に一緒に会いに行って、番の解消を説得してくれた。僕のこれまでの仕事ぶりを熱心に語って、これまで通り側にいてほしいと懇願した。両親はそこまで言ってくれるのならと、渋々了承した。だから、僕は今まで通り秘書として桐生の世話をすることになった。 「居心地が悪くないですか?」  葉山に確認するが、「僕は英語もできませんし、海外に行ったこともないので、沢木さんがいてくれたら心強いです」と言い、桐生も、「お前がいないと仕事にならない」と言い放った。  桐生の世話だけでも大変なのに2人分になったのかとため息をこぼしたが、足元にはもう1人「しゃわぁ」とまとわりついてくる者があった。  葉山が桐生と番になって渡米するには戸籍上の夫婦になる手続きが必要になり、彰の戸籍も父親の欄を埋めて新たに作り直した。桐生の両親にも4人で会いに行った。桐生の両親は僕に平謝りで、大変恐縮してしまった。  他にも葉山の叔父夫婦と従兄弟のすずと彼にも会いに行った。  海外に行くのは桐生と葉山が番ってから行くことになった。  番っていない葉山を見知らぬ土地に連れて行くのは危険だからだ。もしも迷子にでもなった先で発情期にでもなったら危険だからだ。日本と違って治安が安定しているとはいい難い。  僕の番の解消の為に仕事数日休むことになった。  何が起きても大丈夫なようにバース専門病院への入院の手続きもした。 「うわぁっ……」  病院のベッドの上で首を掻きむしってうめいた。側にいた看護師と医者が僕の両腕を押さえつけて、側にいた桐生も手を貸した。  血液が逆流して、首に集まるような感覚。熱が溢れて痛みを感じた。爪を立てて掻きむしろうとする腕を押さえつけられて、うめき声をあげ続けた。  どのくらい時間が経ったかは分からないが、意識が飛んでしまったようだった。  ぼんやりと白いものを見つめていると、「じょーじょーぶ」と舌足らずの子どもの声がしてひょっこりと視界に黒い物が入ったと思ったと同時に、「うっ」と重みに声を上げてしまった。 「しょ、彰っ、だ、だめだよ登っちゃ」  葉山の慌てる声がして、「沢木大丈夫か?」と桐生の声がしたと同時に胸の上の重みを抱き上げてくれた。 「……大丈夫じゃない」

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