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辻褄合わせ
和人は頷いて僕を抱き起こすと濡れた服とズボンを脱がせた。同じように濡れてしまった和人も下着姿になった。バスルームのドアを開くとバスタオルを数枚引き取って僕に被せる。
「こっちに行こう」
和人に腕を引かれて連れて行かれたのはベッドルーム。
すぐにベッドに押したおされて、「発情期ならずっと付き合ってあげるけど、突然のヒートならここに放てば治るよ」とお腹を押さえた和人が言った。
発情期は1週間この熱が続く。だけど、今は発情期じゃない。発情期がひどいから常日頃から抑制剤を飲んでいて、ヒートなんてこれまで桐生と番ったあの時しか起こしていない。
あの時も桐生の性を受けてすぐに熱はおさまった。
「発情期じゃない」
応えると、「そうだね」と返された。
和人も分かっている。突然のヒートの原因を。
この人が僕の運命だ。
「まずは、この熱を収めてからにしよう」
和人はバスタオルを剥ぎ取ると、僕の濡れている下着も脱がせた。
「……んっ……」
熱が上がると香りも強くなる。
和人の手が裸の肌を撫でる。焦ったいほどのゆっくりとした動きに、求める熱で僕の香が強くなる。
「ああっ……」
溢れる声に慌てて両手で口を抑えた。胸の突起を摘まれてのけぞると反対側を唇で嵌まれた。
「流されていいよ」
和人が優しい声音で言う。促される。
初めて受け入れた時は発情に支配されて、恐怖した。流されることを拒んでいる。
身体は喜んでも心は恐怖を感じていた。そして、事故だと言われた絶望。
それが僕にブレーキをかけさせる。
「んぁ……はっ」
身体は快感を知っている。発情に流された快感を一度知っている。甘い快感がぐずぐずと身体を溶かしていく。
口を抑えていた手を和人の肩に回して、ほんの少しだけ引き寄せた。
「んっ……」
口づけは甘い。すぐに噛みつかれるような口づけに変わって、唇の端から唾液がこぼれ落ちる。
甘い蜜のような口づけにもっとと身体は反応する。
「沢木、君。名前は?」
唇を離した和人に聞かれる。
「……ひ…」
「ひ?」
名前を呼ばれるのは好きじゃない。幼い頃に揶揄われた経験もある。だからあまり好きでは無いのだ。
「沢木です」
「何それ」
和人は笑って、「沢木、ひ?」と続きを促す。
促して僕の下唇を舐めた。口づけがくると思って不意を突かれた。恥ずかしさに赤くなる。
「ひの次は?」
ちゅっと音を立ててすぐに唇が離される。
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