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辻褄合わせ
意地悪だ。ぎゅっと唇を噛み締める。
「そんなことするんだ。まぁ、いいけど」
和人はそう言って身体を起こすと自分の着ていた下着を脱ぎ捨てた。細身だと思っていたのに綺麗に筋肉のついた腹筋と胸筋。筋張った張りのあるの肌。
ぎゅっと目を閉じた。甘い香りが自分から立ち昇るのを感じた。
αの男に自分が欲情しているのを感じて恥ずかしさに目を閉じた。
「ああ、かわいいねぇ」
和人は言いながら両手で僕の胸から腹までを撫でる。身体の熱さにしっとりと汗ばんでいる。そのまま腹の下まで手を伸ばされて、足を開かされた。身体を入れた和人にまじまじと見つめられる。
「ほら、気持ちいいだろう?」
和人の手が僕自身を掴むと上下に擦り上げる。もう片方の手が円を描くように蕾に触れる。
襲うようにしかされたことはない。
こんなにゆっくり甘やかされたことはない。
「か、和人さん、もう、やめて」
甘やかされて求められたことなんてないから、どうしていいか戸惑ってしまう。胸が締め付けられて、シーツを握りしめた。
「沢木君?」
名前を呼ばれて目を開ける。覗き込むように心配そうに和人が見つめている。
「もう、やめて、襲って」
優しくなんてしなくていい。分からなくなるように襲って欲しい。
ゆるゆるとした愛撫は焦ったくて、懇願したくなる。
もっと、もっととあの時のように。桐生の時のように浅ましく求めてしまいそうだ。
「襲ってなんていないよ。愛してるんだ」
さも当たり前のように言われて驚いた。
「……僕は愛されたいと思ってない」
これまで愛されたことなんてないから、ずっと側で見つめてきただけだから。期待と絶望を繰り返してきただけだから。愛されたいと望んだことはない。番になりたいと、求められたいと思ったことはあっても、愛されたいと望んだことはなかったから。
この熱をなんとかして欲しいのに、強烈な刺激は与えてくれないからどんどん熱は上がる一方だ。
「ああっ……やぁ……」
より深くに指を差し入れられた。ゆるゆるとした動きに焦ったさが募って握りしめていたシーツを引き寄せる。
「この甘い匂い。たまらないね」
和人はグチュグチュと指を動かして刺激を強める。
「ああっ……あっ」
声を上げると同時に甘い香りが溢れ出す。動かされる指の間から水音がする。指が増やされて刺激が強くなると余計に声が上がって、シーツから手を離して、和人の肩に手を回して引き寄せる。
「んっ……はっ、んん」
噛み付くような口づけに息が続かず互いの荒い息が部屋に響く。
「ああっ……熱いっ」
和人のそれが蕾に押し当てられて、ゆっくりと押し入れられた。
「ひっ……ああっ……」
身体がこわばる。
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