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辻褄合わせ

「今も?」  首を横に振った。 「今は大丈夫」  番を解消したらその症状は治った。 「運命の番が引かれ合うって本当だったんだ。偶然、本当に偶然再会して、彰が、彰人の子どもだって分かったんだよ。一度だけの関係で男のΩに子どもができるなんて奇跡だよ。引き離さない為の子どもだったんだよね。引かれ合う運命に抗うなんてできなかった。桐生は葉山を選んだ」  涙が溢れて溢れる。和人がそれを指先で拭う。 「僕は運命を信じてた。だから、桐生が僕の運命じゃないって分かってた。分かってたんだ」  分かってた。だって、桐生は僕に惹かれたりしなかったから。 「分かってたんだよ。本当は知ってたんだ」  ポロポロと涙が溢れる。耐えてきた想いが溢れて溢れていく。 「ずっと、ずっと……好きだった」  初めて会った時に恋に落ちていた。 「だけど、運命じゃなかった」  報われない恋に囚われて、事故で番になった。  耐えるだけの恋をひとりで続けてきた。 「遅くなって悪かった」  和人が謝ってもう一度触れるだけの口づけをする。  出会うべき運命は他に用意されていた。  違う相手と番っていだけだと、運命は導いていた。  出会うべき相手は他にいると。 「運命に愛される覚悟はできてるのかな?」 「もう愛されすぎて実感しかない」  運命に降り回されている。こんなに遠回りさせらても運命に出会うように、引かれ合うように導かれている。 「俺は甘やかして、束縛するぞ。ドロドロに甘やかすからな」 「僕は、甘えることも束縛されることもされたことがない」  ずっと追いかけるだけだったから。 「愛されたいと望んでくれないか? 俺のものになると。お前の発情期は俺が全部もらう。これから先のヒートも全て」  愛されたいと、受ける側に、諦めることなんてしなくていい。 「もう、逃がさない。運命ごと全て奪う。お前を逃がさない」  掴み取った運命を離したりしない。  和人が手を僕の手をとって顔の両側に指を絡めて押さえつけた。  繋いだ手から甘い痺れが広がる。強く握られて握り返す。 「……愛され、たい」  言葉にするのは簡単だ。だけど、強く求めることは言葉では伝えられない。  身体中から溢れる甘い香り。  それが証明する。  求めていることを。愛されたいと望んでいることを。 「俺の全てを運命に捧げるよ」  噛み付くように深く、深く口づけをされて、舌を絡めて答えた。

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