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辻褄合わせ

「どういうことですか?」  瓶を和人に返した。 「『運命の番』が無理矢理引き離されて病んで死んでしまった話を聞いたことがあるんだよね。それじゃないかな?」 「それ?」  首を傾げる。 「俺たちは出会っていなかったけど、ニアミスはあった。そこへ彰人の邪魔が入って引き裂かれて番にされてしまったわけだから、『病んで』しまったんじゃないかな?」 「そういう理由ですか?」 「うん。ひなたがヒートを起こした2年前って、俺その場にいたからね」  自分の運命の相手は桐生だと思っていた。近くにいたαは桐生だったから。だからその場にいた人物には気がつかなった。確かにあの日はお兄さんがくると言っていた。その後の日本でのホテルのパーティーにも来ていたのなら、あの時具合が悪くなったのも、ニアミスしていたからだろうか。 「他に、ニアミスって……」  具合が悪くなるタイミングでニアミスしていたってことだろうか。引かれ合う運命にあるのを妨げられていたから『病んで』いたのなら、妨げになっていた桐生の欲を感じて具合が悪くなったのも辻褄が合う。 「ああ、本当にもったいないことをしたよ」  和人は頸に残る痣を撫でる。 「でも、発情期を楽しめるのも一興だよね」 「や、やめてくださいっ。僕はずっと一緒にはいないですよっ。桐生の秘書なんですから」  今でさえ毎日のように呼び出されて世話を焼いているというのに、あの2人を放置なんてできない。子どもの世話だって……。 「甘やかしすぎなんじゃないの?」 「そんなことはありません。秘書として、社長が快適に仕事をできるようにするのも仕事です」 「プライベートとしっかり区別すべきだと思うけど」  プライベートなんて考えたこともなかった。だって、高校の時には番になると、結婚すると周りを騙していたし、社会人になってからはずっと同棲していた。仕事もプライベートもずっと一緒だったから。  恋人がいたこともなかった。ずっと、桐生しか見てなかったから。 「プライベートって……僕はまだ、あなたのものになったわけじゃないですよ」  声が小さくなる。運命の番なのは受け入れたけど、甘い香りを、欲を受け入れはしたけど……。 「俺のものになったらいいよ」  和人がガバッと僕にのしかかった。 「わっ……と、ちょっと」  被っていた布団ごと抱きしめられる。 「もう、俺のものだ。逃がさないし、全て奪う。全部、全部俺のものだよ」  抵抗できないように力一杯抱きしめられる。  求められることに慣れない。どう返事をしていいのかも困る。  連れ去られてきて、こんなに求められてどうしていいか分からない。  急なことに戸惑って、どうしていいのか分からない。  頷いたらどうなるのか分からない。  運命の番だけど、番にはなれない。 「全部だ」

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