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辻褄合わせ
「彰人と相思相愛じゃないのに番になったのは……彰人がひなたのヒートに充てられてラットを起こしたからってこと?」
「そうです」
「じゃあさ、その後は?」
「その後?」
その後ってなんだろう。
「その後相思相愛ってこと?」
「いえ、ずっと僕の片思いです。桐生の欲を感じると吐き気と頭痛がしたので……」
「えっと……ひなたって、その、彰人だけってこと?」
「桐生だけです」
これまで好きだった相手は桐生だけだ。高校入学と同時に恋に落ちて、それからずっと桐生への片思いだ。
「でも、番だよね?」
番になってからは吐き気と頭痛がして桐生とは何もなかった。桐生がその気になった時でさえ、僕は受け入れることができなかった。運命ではなかった拒否反応だと昨日わかったけど、桐生に襲われた恐怖も原因になっていたのかもしれない。
それで、『彰人だけ』って……。
顔が赤くなるのを感じる。
聞かれた意味が分かって俯いた。
「それって、僕の経験値を聞いてますよね?」
和人は、「もしかしてだけど、番にされた一回だけってことないよね?」と聞いて僕を自分の胸に抱きしめた。甘い香りが再び車内に広がる。
「……それだけ」
胸に抱かれているから声はくぐもってしまった。
「ああ、なんて可愛いんだろう」
和人はぎゅうぎゅうと抱きしめて、「俺が、俺がいっぱい愛してあげる」と言った。
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