61 / 63
束縛と嫉妬と誓い
ケーキの箱の上の窓から中を覗くと大きなホールケーキが入っていてまたもメッセージが書かれている。
「なんですか、これ?」
振り返ると和人は、「プレゼント」と笑った。
「彰人ぉ、ひな……沢木君もらって行ってもいいかな?」
「ダメですよ」
桐生は間髪入れずに断った。
「アキには友紀君がいるんだから俺には沢木君くれてもいいだろ」
和人は子どものように桐生にいうが、「ものじゃ無いんだからな。それに沢木は俺の秘書だ」と強く言いのける。
『ピンポーン』
玄関のチャイムが鳴って、「誰だろう?」と葉山が急いで出て行った。
「じゃあ、俺と結婚してもいい?」
「は?」
「え?」
桐生と同時に聞き返す。
「そんなことになったのか?」
「いいえ。初耳です」
「和人兄、勝手なことを言わないで……「アキー。ちょっときて」」
葉山の玄関から呼ぶ声に桐生が遮られて玄関に向かっていった。彰は床に下ろされてその後をついて行こうとするのを、「彰、ここで待って」と引き留めた。
「結婚なんてしないですよ?」
「だって、俺の番にはなれないんだから、伴侶くらいはいいだろ?」
和人は近づくと僕が持っていた花束を取り上げて彰に渡した。
近づく和人を避けて後ろに下がる。
和人が意地悪く笑って、αの甘い香りを放つ。
「やめて、ダメですっ」
言い返して逃げ出す。玄関の方に行くと、桐生が、「和人兄っ」と怒っている。
「ああ、ケイタリング? 出前?」
玄関から食欲をそそるいい匂いがしていて、桐生と葉山が箱を抱えていた。
「もう、今から作るんじゃ遅くなるから、頼んどいたよ」
「車の中の食材は?」
「ああ、それはアキ達にあげる」
和人は言いながら葉山の抱えている箱を受け取ってリビングに戻っていく。
自由奔放具合に眩暈がする。
「桐生、僕、疲れてきました」
呟くと、「兄はいつもあんな調子だ」と言った。
「私、ついていける気がしません。全力で拒んでもいいですか?」
「それは構わないが、『運命の番』だからな」
「そうでした」
ため息をこぼすとリビングから顔を出した和人に、「早くきて」と呼ばれた。
リビングに戻るとテーブルの上に届いた箱の中から料理を取り出していて、「中華でよかったよな?」と言いながら桐生が持っていた箱も取り上げた。
ともだちにシェアしよう!