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 体が燃えるように熱い。体内から留まることを知らないように溢れてくるこの性的な衝動は、もはや恐怖でしかない。何度も自慰でそれを吐き出そうとしたが、何も変わらなかった。  この3日間、これがオメガの発情なのかと絶望的な気持ちで打ちひしがれていた時、芹沢は何故か桐野が頭に浮かんだ。そんな自分の思考回路に最初はひどく戸惑ったが、芹沢はすぐにそれを諦めたように受け入れた。  多分自分は薄々気づいていたのだろう。自分のこの激しい衝動を受け入れて、沈めてくれる相手は桐野しかいないということを。あいつはベータであってアルファではない。でも、桐野が芹沢に向ける優しさはあの日を境に友情を超えてきたのだ。芹沢はそれを意識すればするほど、桐野から性的な魅力をまるでセンサーのようにキャッチしてしまい、ひどく戸惑っていた。 (何故だろう。何故桐野なんだろう。)  自分がオメガだと気づいた時に、芹沢は桐野が傍にいてくれたことがとても嬉しかった。この感情に未だ名前をうまく付けられていないが、もう芹沢は覚悟しなければならないのだろう。   自分は桐野に抱かれたい。桐野以外の人間など考えられない。心も体も芹沢はまだ自分を男だと認識しているが、そんな括りなど容易く超えてしまうほど、芹沢は今桐野を強く求めている。 「ふんっ、んんっ」  芹沢は自分から桐野の唇を奪うと、激しく舌を絡ませた。舌同士が触れ合った瞬間頭に火花が散り、芹沢の体の全てが性感帯のようになってしまっていることに、複雑な気持ちになった。こんないやらしい体になってしまったことへの嫌悪感は、そう簡単には拭えない。   芹沢はこれから迎えるこれ以上の快楽に、自分が立ち向かえるのか不安になった。芹沢は桐野に抱かれたまま死んでしまうのではないか。キスだけでこんなに強い愉悦を味わってしまっては、そう思ってもしょうがないだろう。  (怖い……俺どうなっちゃうんだろう……。)  そんな不安を抱えながらも、芹沢は桐野との甘いキスに、体をびくびくと震わせながら溺れていく。 「はあ、ああ……ふんんっ、もっ、とっ」  桐野の頭を両手で抑え、芹沢は貪るようにキスを求めた。もっともっとその舌で自分を狂おしいほど刺激して欲しい。桐野の舌がいい。そのピンク色のかわいい舌で、自分の舌を激しく凌辱してほしい。   でも桐野は芹沢の唇から名残惜しく自分の唇を離すと、芹沢をいきなり抱き抱えた。 「寝室はこの奥だよな?」 「……あ、ああ、そうだよ」  芹沢がそう言うと、桐野は芹沢を抱き抱えたまま寝室へ真っ直ぐ向かった。扉を開け中に入ると、芹沢はベッドに勢いを付けて放り投げられる。 「わっ!」   驚いてそう叫んだ芹沢に桐野は空かさず覆いかぶさると、芹沢の口を素早く塞いだ。ねっとりとした湿度の高い舌を執拗に絡ませられ、何度も自慰で慰めてきたはずの芹沢の中心は、もう既に桐野から与えられるキスだけでイキそうになっている。 「ああっ、んんっ、ふっ、イクっ、ま、まってっ」 「イケよ。何度でも。俺がカラカラになるまでイカせてやるから」 「そ、そんなっ、ああっ」  桐野はキスをやめると、芹沢のズボンに手を掛けて、無造作に引き下ろした。露になった芹沢のそれを、桐野は愛おしそうにじっと見つめた。 「……こっちにもキスしたくなるよ」 「ああ、ううっ……ダメっ、ダメだっ」  桐野は芹沢の中心を掴むと、躊躇いなく口に含んだ。さっきまで芹沢の舌を凌辱していたそのいやらしい舌は、芹沢の中心をなぞるように強弱を付けながら這い回り、芹沢の快楽を弄ぼうとする。  「ばっ、じ、焦らすなっ」 「イキたくて、苦痛に歪む芹沢の顔ってヤバいな、俺ずっと見てたい」 「な、何言ってんだよ……はあ、ああっ」 「はは、冗談だよ。イケよ。今すぐイカせてやる」  桐野はそう言うと頭を素早く上下させながら、芹沢の中心を執拗に愛撫した。 「やあっ、ああっ、くっ!」  桐野の熱く湿った口腔内に芹沢は容赦なく吐精してしまった。そんな羞恥も束の間、芹沢の欲望はまだ足りないと言わんばかりに、懲りずに硬質を極めようとする。 (ああっ、くっそ! イったばかりなのに、何でだよ!)  芹沢は自分の際限のない欲情に頭がおかしくなりそうになる。こんな体などいっそのこと綺麗さっぱり灰になるまで燃やしてしまいたい。そう思うのに、桐野に抱かれる至極の快楽は、この体だからこそ味わえるものだということに、芹沢は否応なく気づかされてしまう。 「どうしよう……俺全然治まんないよ。桐野……桐野! もっと抱いてくれ!」 「何言ってんの? まだ始まったばっかりだろう?……俺が全然治まってないからな」  桐野は拗ねたようにそう言うと、芹沢を上から真っ直ぐ見下ろした。 「本番はこれからだ。覚悟しろ……芹沢」   桐野は芹沢の耳元に、男らしい声で吐息交じりに囁いた……。

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