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「はああっ、うっ、くう、うっ!」
下から何度も何度も突き上げられる刺激に、忘我するほどの愉悦を味わう。ここがどこで、自分が誰で、といった当たり前のことが何も理解できなくなる。これほどの快楽は、自分と桐野だからこそ生まれるのだろうか。何度も言うが、桐野はベータだ。アルファではない。もちろん自分はアルファとセックスなどしたことはないが、桐野とのセックスはまるで、ジグソーパズルのピースがぴったりはまるのと似ている。自分の体を貫く桐野のそれは、芹沢の中で熱く太い肉棒となり、芹沢の未知なる快感のスイッチをいとも簡単に入れようとする。激しく腰を動かされるごとにその愉悦は高みを極め、芹沢を享楽の世界へと誘い、芹沢はその世界で踊り狂わされる。
「ま、まって、はあ、はあ、お、俺、もう……」
桐野と芹沢はベッドの上で何度体を重ねても飽き足らず、そこから移動すると、一人掛けの椅子に全裸で股を広げて座った桐野の上に、芹沢も桐野に背を向けるようにして、真っ裸で股を広げながら腰を落としている。そんな自分の姿は淫靡以外の何物でもないだろう。こんな自分を客観視してしまったら、芹沢はもうこの先自分として生きていく自信を無くしてしまいそうなる。それでも桐野は、芹沢の腰を強く掴みながら、下から芹沢に容赦なく自身の熱い中心を打ち付けてくる。
芹沢は桐野の筋肉質な、がっしりとした太ももを両手で掴み必死で自分の体を支えた。芹沢はつい力を入れ桐野の太ももを強く掴んでしまい、痛い思いをさせていないか焦ったが、桐野はそんことなどお構いなしに、絶え間なく芹沢に刺激を与え続ける。
「あっ、あっ、はああっ、来る! またぁ!」
何度目か分からないほどのエクスタシーに芹沢は背を仰け反らせながら喘いだ。それと同時に触られてもいないのに、芹沢の中心がどくどくと吐精をしているのが分かる。
桐野は一旦芹沢から自分の中心を抜くと、それはまだ芯を持ち昂っていて、ヌラヌラと輝きながら存在感を示していた。
「はあ、はあ、俺まだ、ごめん、芹沢……もうちょっとだけ」
ぐったりと桐野にしなだれかかる芹沢の耳元に、吐息交じりに桐野はそう言った。
「はあ、はあ、構わない、もっと、くれ……」
芹沢は、桐野の肩に頭を乗せて腕を伸ばすと、桐野の頬を掴み、強く引き寄せ口づけた。
「……好きだ。俺も、今やっと言えた……」
芹沢は桐野を見つめると、そう心を込めて言った。
「……そんなこと言って、後悔しないか?」
「え?」
「俺を本当に好きなのか? その言葉信じていいのか?」
桐野は大きな瞳を不安気に揺らしながら、芹沢を見下ろした。
「ああ。好きだよ。自分がオメガだと知った時、お前は俺を守ると言ってくれた。俺はお前を信じてるよ……お前と一緒なら何も怖くない」
「芹沢……」
何故か桐野は芹沢から目を逸らすと、芹沢を背後からぎゅっと力を込めて抱きしめた。
「俺が今から言うことを……ちゃんと聞いてほしい」
「え? 何だよ、急に……」
芹沢は少し不安になりそう聞き返した。
「……俺は……アルファなんだ」
「……え?!」
「そのことを知ってるのは職場では校長だけだよ。それ以外の同僚には内緒にしてる。俺の親は政治家なんだ。俺も後を継がなきゃならなくて、でも俺はそれを拒んで教師になった。親には期間限定という条件で教師をしていることを許されてるけど、本当は辞めたくない」
芹沢は桐野の言葉に耳を疑った。でも、芹沢はすぐに桐野に対する数々の違和感を思い出した。家に行きたいと言った時の狼狽ぶりも、青いアウディも、有名医師との繋がりも、クレジットカードも。何故自分が桐野に性的に強く惹かれてしまうのかということも。そのすべてが今ここで合致する。
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