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「いいよ。俺を好きだということを撤回しても。もう、俺を信じられないだろう?」  桐野は苦しそうにそう言うと、芹沢の肩に顔を埋めた。 「バーカ。それが何なんだよ。お前俺に言っただろう? 俺がオメガとか関係ないって。俺も同じだよ。お前がアルファとか関係ないから……」  正体を隠されていたことに怒りなどない。ただ桐野は、アルファという崇高な血を持ちながらも、自分の性に縛られて自由を奪われていたのだ。その事実に芹沢の胸は痛くなる。結局アルファもオメガも同じなのだ。持って生まれた性に皆翻弄されている。それでも、自分の生きるべき道を見つけそれをしっかりと掴み取るしかない。自分の誇りを失わず、自分を信じて生きていくしかない。芹沢には今それができると思える。この男と一緒なら、自分はそんな風に生きていけると、そう心から思える。 「一緒に生きていこう。これはもう運命だよ。桐野……」  芹沢は、桐野の肩に頭を載せながら、小刻みに震える桐野の頭を優しく撫でた。この言葉に何の迷いもない。自分は今はっきりと言える。この男を心から好きだと。 「……芹沢、それって……こういうことでいいのか?」  桐野は恐る恐る探るようにそう言うと、芹沢の項に素早く口を移した。 「こういうことって? つまり?」  芹沢は薄々気づいていることをわざと焦らすようにそう言った。 「俺と……番になるってことだよ」 「……ああ、そうだな。こんな簡単に運命の相手が見つかるなんて、俺ってすげーついてる」  芹沢はそう言いながら、もう一度下から桐野を真っ直ぐ見つめた。 「噛めよ。強く。でも、俺痛いのあんま平気じゃないから、少し手加減な」  桐野は涙で濡らした目を潤わせながら、何も言えないのか何度も小刻みに頷いた。 「ありがとう芹沢。俺を受け入れてくれて……」  桐野がそう言ったのを合図に、桐野は芹沢の腰を掴み持ち上げると、自信の昂りを芹沢の秘部にあてがい一気に貫いた。 「ああっ、やっ、き、桐野!! まっ」  胸の突起を焦らすように愛撫されながら、桐野の細かく力強い律動が芹沢の奥を絶妙に刺激する。そのせいで再びオーガズムが自分にひたひたと迫って来るのを感じた。  何度目だろうか? もう多分自分は数え切れないほど達してしまっている。もしオメガでなかったら、自分はこんな官能的な世界があるということを知らずに人生を終えていたかもしれない。  男、女、ベータ、アルファ、オメガ。すべての性にはメリットとデメリットがある。  オメガには生殖能力という力と、それに付随する発情という厄介な性質がある。そのことで汚らわしい人間と蔑まされてしまうが、番となるアルファとのセックスはとても甘美なもので、尚且つ男でも子供を産めるというそのメリットは、自分の人生に大きな可能性を与えてくれる。  全てを手にしているアルファでも、この国の中心を担うという世間の重圧から逃れられず、桐野のように自由に自分の人生を生きられていないというデメリットがある。でも、考えようによっては、この国を変えられる強い力を持っているということだ。それを前向きに捉えた時、アルファとして生きることへの、誇りや生き甲斐を持てるのではないかと芹沢は思う。  オメガという性を受け入れるにはやはり時間が必要だが、この2つの性は、心の持ちようでは、人生を180度変えられる力があるのかもしれない。 「ううっ、はあっ、ん、ダメっ、くっ、まただっ、また、イクっ!」  桐野に腰を大きくグラインドされながら強く何度も打ち付けられて、芹沢の視界は快感で真っ赤に染まった。その時項辺りに鈍い痛みを感じた。でも、強いオーガズムの方が勝り、その痛みを簡単に掻き消した。   気が付くと桐野の中心から吐精されたものが芹沢の腰のあたりに生暖かく広がるのを感じた。 二人は同時に絶頂を迎えた。体力が限界に達するまで繋がれたことは、言葉では言い表せないくらいの満足感を二人に与えた。それは、番になるという行為を結んだことも含めて、今この瞬間が紛れもなく幸せであることを意味していた……。

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