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4_うつらうつら

気持ちがいい晴れた日だった。 小春日和。 大きな公園に来た。んーって伸びをした。 髪を適当に結え上げて、ぐずぐずの団子頭になった。 コートのポケットに手を突っ込んだ。 ライターを指でもてあそぶ。 リョウちゃんから講義終わったら行くって連絡がきたから、先に芝生に寝転んで待ってた。 ほんと、日差しが冬じゃないみたい。 「大佑」 「あ、お疲れー」 「こんなとこで寝てたら風邪ひくよ」 「リョウちゃん、心配してくれんの?」 「それはどうかな」 リョウちゃんは前髪を邪魔そうに触って、眼鏡を押し上げた。 俺は起き上がって、服にくっついた芝生をはたいた。 「でた、あざといわーリョウちゃんのめがね」 「いやいや、普通に今日これないと見えないんだもん」 「似合ってるよ。かわいい」 そう言って、リョウちゃんの頭を撫でた。 「今日は、髪上げてんだ?」 「ん?うん、あったかいしね今日。あ、うなじにやられたかさては!」 「うん、やられた」 いつも素直なんだよね。ほんとかわいい 「この首筋の花、なんだっけ」 「月下美人」 「なんでこの花にしたの?」 「彫り師の人が、俺に似合うからっていれてくれたんだよ。入れられた後よ、月下美人と知ったのは」 「すげえ」 「調べたら、はかない恋、はかない美、あでやかな美人だって、花言葉うけるでしょ」 「うわ、やばー」 「逃げました、その彫り師から」 「逃げたんだ」 「食われるって思って」 「好きだったんだ、大佑のこと」 「さー?どうかな。やりたかっただけじゃない?未遂に終わったよ」 「へー」 「あ、大丈夫。大佑はいつでもウェルカムだよ」 「やめて、俺はそんなんじゃない」 また眼鏡を押し上げて、笑った。 「でも、大佑のこと美人だなっていつも思ってる」 「ありがとーっ」 リョウちゃんの体に抱きついた。 「やめろっ、公衆の面前でっ」 「ほとんど誰もいないじゃん」 そういいながら離れた。 「手えつなご」 「いいよ」 「それはいいんだ」 リョウちゃんのきれいな手に指を絡ませた。 こうやって手を繋がせてくれたりするけど、リョウちゃんは難攻不落だ。 相変わらずのらりくらり のらりくらりもいいものかな はるのうみひねもすのたりのたりかな みたいな。 解けかけギリギリで繋がった指も、そのままで歩く。 隣を見るとリョウちゃんと目が合った。 また眼鏡を押し上げて笑った。 …くそあざとい。

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