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【酷され】寛之はお出かけ中!

「は? そんなんで嫉妬してんの? 心狭っ」  煙草の煙を吐き出して軽くそう言って来た堤に、康一はムッと口を結んだ。こんなやつに言うべきじゃなかったと思いつつ、言ってしまったものは仕方がない。 「それはお前が独り身で、恋人が居ないから言えるんだ」 「言うてストリップだろ? ただのショーじゃん」  それはそうなのだが。  愚痴の内容は、恋人である金木寛之がゲイの友人である大吾という男と、かねてよりの約束だったらしいストリップを観に行ったことだ。大吾との関係を疑っている訳ではない。彼はゲイだが寛之と同じネコであるし、ただの友人なのは知っている。 「僕やお前が観るのとは、違うだろ……」 「ま。そりゃそうだ。寛之くんはゲイだもんな。好みの男もいるかも」  軽口にグッと拳を握りしめる。「行ってもいい?」という問いに、OKを出したのは自分だし、余裕のふりをして見送ったのも自分だ。だが、堤の言う通り、寛之はゲイで、好みの男も居るかもしれない。  もともと、強引に自分から迫ったようなものだ。何も知らない、他の男を知らない彼を、自分が束縛している。その自覚があるだけに、不安でたまらない。ストリップに出ているような男性は、皆セクシーで魅力的な男だろう。体格だって、きっと良いに違いない。背ばかり高くてガタイが良いとは言えない自分とは、大違いだ。 「ま。そうは言っても規制厳しいし、際どいとこまでしか脱がねえだろ」 「……まあ、そうだが」  昔はストリップ劇場など多数あったらしいが、昨今は規制されてほとんど営業していない。寛之が行くという店も、観光客が入るようなかなりライトなストリップのはずだ。性的な目で見るよりも、そういう雰囲気を楽しむアトラクションと言った方が良いだろう。 「けど、モテそうだろ……」 「ああ、彼体格も良いし背も高いし。確かにモテそう」  大吾が一緒なのだから、きっと大丈夫だとは思う。けれど、寛之が押しに弱いのは自分が一番知っている。 「しかしまあ」  ククと、堤が笑う。軽薄な笑いはどうにも癪に障った。 「あの康一がこんな風に嫉妬するようになるとはね。誰にも執着しなかった癖によ」 「お前」 「寛之くんが昔のお前とか知ったら――」 「殺すぞ」  低い声で脅す康一に、堤がゲラゲラと笑った。適度な夜遊びをしていた頃の康一を、寛之は知らない。教える気もない。寛之だって知りたくはないはずだ。 「やだー脅迫罪ですぅ」 「お前だって今にな、良い人が出来たら過去を悔いることになるからな」  自分以上に遊び人の癖に。暗にそういう康一に、堤は鼻で笑って見せた。 「俺はそんなことにゃならねえよ。相手だってしっかり選んでるから、素人さんには手だしてねえし。変な性癖もないし~?」 「黙れクズ警官」  寛之が遊びに行っている間、気がまぎれると思ってやって来たというのに。逆に神経が逆なでされてしまったと、康一は深いため息を吐き出した。

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