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泉さんと遙は一瞬で仲良くなった。
なんで…?ずるい、羨ましい、
でも引きずり込まれるみたいに、僕も2人にまざって、延長した個室で話をする。モデルをやるか、やらないか。
「僕にはちょっと荷が重いっていうか、」
「なんでや!やるでしょ!やらんわけないし」
「遙、すげえ攻めるねえ」
「そらそうでしょ。俺もずーっととおるちゃんのことかっこいいのになあって思ってたから、かっこいい服着てランウェイ歩いて、みんなが『わあ…すごい…』ってなるとこ見て『ほらみたことかい!』て思いたいんです!」
「なにその理由…」
「あはは!いいねえ、ほんとそう思うよ。自覚ないんだ?こんなスタイルいいしかっこいいのに。あ、遙も出たら?まだ足りないんだって、モデル」
「何言うてるんこの人」
遙は急に真顔になって、泉さんにタメ口ききだした…
「俺がモデルやるように見えるん!?ないわー、ないわーみちるまじで見る目ゼロ」
「ええーー!!なんでよ!透がデカいからそうでもないように見えるけど、俺くらいあるでしょ?俺180。一応、175センチ以上の人が理想らしいんだよね」
「…まあ、178あるけど」
「いいじゃん!それに超きれいじゃん」
「それ禁句じゃあ!!」
「なんでよ!!」
「俺、ずーっといじめられてたし地元で。オトコオンナーって。髪の毛短くてもそう言われてた。だから髪伸ばして、顔あんまり見えんようにしてる」
遙は、結えていた髪をほどいた。
泉さんは唇を少し舐めて、それから遙の方を向いて座り直した。
「気を悪くしたならごめん。……俺は遙の顔好き。きれいって思う。女とか男とか、そういうの関係なくて、ただ、…そうだな……なんて言ったらいいか難しいけど…」
「僕は、卒業するまでに遙のことモデルに描きたいって思ってるよ」
前髪の隙間から、目が見える。ちらちら光って
「いい絵が描けるんじゃないかって思うから」
「……ほんなら、もっと練習して上手くなったらモデルしてやる」
遙は僕の肩をどーんって押した。
「約束やぞ」
「分かった。約束。遙が認めてくれるくらい上手くなったらね」
「ん。…みちる、モデル足りないの?」
「そうみたい。服飾科の俺の友達1人で3着作るらしいんだ。だから、俺と透と遙でできたら、すっごい嬉しいし、助かる」
「……やったる。でも知らないからね、俺、転けるかもしれん、歩いてるとき」
「大丈夫!そのときは俺が受け止めてあげるから」
「そんなほっそい腕で受け止められるかい!むりむり!転けたら立ち上がって、堂々とそのまま帰るっ」
遙は前髪を結んだ。
不機嫌できれいな顔がよく見える。
泉さんはくすくす笑いながら脚を崩してあぐらをかいた。
「よし!じゃあ決まりってことで、友達に連絡するね。で、風呂行こー」
「待って、」
「ん?」
泉さんと目が合う
「あの、僕…モデルは、その…」
「どうしても、だめ?」
だめだ、泉さんの美しい、
「めちゃくちゃになっちゃうかも、ですけど、」
「大丈夫。一緒にやろう!いい?」
「……はい、じゃあ…」
「よかったー…!ありがとね、ほんと」
くしゃっとした笑顔だ、初めて見た
かわいいって思った。
どうしてだろう。どうしてそう思うんだろう?
こんな気持ちになるって、不思議だ
思えば高2の頃初めて会った時から、どうしてこんなに泉さんに魅かれるんだろう?
これは恋愛感情なのか、
ただ本当にきれいだって思うからなのか、
親しげに話してくれたから、それで好意を持ったってことなのか、
分からない。だけどたしかに好きだ。
「透、行こー」
「あ、はい、」
手を引っ張られる。
指先が触れて、心臓が潰れそうになる。
「へへ、とおるちゃんの顔爆発しそう」
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