7 / 53

7

泉さんと遙は一瞬で仲良くなった。 なんで…?ずるい、羨ましい、 でも引きずり込まれるみたいに、僕も2人にまざって、延長した個室で話をする。モデルをやるか、やらないか。 「僕にはちょっと荷が重いっていうか、」 「なんでや!やるでしょ!やらんわけないし」 「遙、すげえ攻めるねえ」 「そらそうでしょ。俺もずーっととおるちゃんのことかっこいいのになあって思ってたから、かっこいい服着てランウェイ歩いて、みんなが『わあ…すごい…』ってなるとこ見て『ほらみたことかい!』て思いたいんです!」 「なにその理由…」 「あはは!いいねえ、ほんとそう思うよ。自覚ないんだ?こんなスタイルいいしかっこいいのに。あ、遙も出たら?まだ足りないんだって、モデル」 「何言うてるんこの人」 遙は急に真顔になって、泉さんにタメ口ききだした… 「俺がモデルやるように見えるん!?ないわー、ないわーみちるまじで見る目ゼロ」 「ええーー!!なんでよ!透がデカいからそうでもないように見えるけど、俺くらいあるでしょ?俺180。一応、175センチ以上の人が理想らしいんだよね」 「…まあ、178あるけど」 「いいじゃん!それに超きれいじゃん」 「それ禁句じゃあ!!」 「なんでよ!!」 「俺、ずーっといじめられてたし地元で。オトコオンナーって。髪の毛短くてもそう言われてた。だから髪伸ばして、顔あんまり見えんようにしてる」 遙は、結えていた髪をほどいた。 泉さんは唇を少し舐めて、それから遙の方を向いて座り直した。 「気を悪くしたならごめん。……俺は遙の顔好き。きれいって思う。女とか男とか、そういうの関係なくて、ただ、…そうだな……なんて言ったらいいか難しいけど…」 「僕は、卒業するまでに遙のことモデルに描きたいって思ってるよ」 前髪の隙間から、目が見える。ちらちら光って 「いい絵が描けるんじゃないかって思うから」 「……ほんなら、もっと練習して上手くなったらモデルしてやる」 遙は僕の肩をどーんって押した。 「約束やぞ」 「分かった。約束。遙が認めてくれるくらい上手くなったらね」 「ん。…みちる、モデル足りないの?」 「そうみたい。服飾科の俺の友達1人で3着作るらしいんだ。だから、俺と透と遙でできたら、すっごい嬉しいし、助かる」 「……やったる。でも知らないからね、俺、転けるかもしれん、歩いてるとき」 「大丈夫!そのときは俺が受け止めてあげるから」 「そんなほっそい腕で受け止められるかい!むりむり!転けたら立ち上がって、堂々とそのまま帰るっ」 遙は前髪を結んだ。 不機嫌できれいな顔がよく見える。 泉さんはくすくす笑いながら脚を崩してあぐらをかいた。 「よし!じゃあ決まりってことで、友達に連絡するね。で、風呂行こー」 「待って、」 「ん?」 泉さんと目が合う 「あの、僕…モデルは、その…」 「どうしても、だめ?」 だめだ、泉さんの美しい、 「めちゃくちゃになっちゃうかも、ですけど、」 「大丈夫。一緒にやろう!いい?」 「……はい、じゃあ…」 「よかったー…!ありがとね、ほんと」 くしゃっとした笑顔だ、初めて見た かわいいって思った。 どうしてだろう。どうしてそう思うんだろう? こんな気持ちになるって、不思議だ 思えば高2の頃初めて会った時から、どうしてこんなに泉さんに魅かれるんだろう? これは恋愛感情なのか、 ただ本当にきれいだって思うからなのか、 親しげに話してくれたから、それで好意を持ったってことなのか、 分からない。だけどたしかに好きだ。 「透、行こー」 「あ、はい、」 手を引っ張られる。 指先が触れて、心臓が潰れそうになる。 「へへ、とおるちゃんの顔爆発しそう」

ともだちにシェアしよう!