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服飾科の教室に初めて入った。 世界が違う… 「いずみーっ!!遅いっ」 「ごめんごめんごめん…」 「あ、モデルしてくれる子だよね?本当にありがとう!むちゃくちゃ助かったー!あ、服飾三年の安達です。安達怜。えーっと、」 安達さんは、僕を見た。 「透くん?」 「はい、澤田透です」 「よろしくね!で、遙くんだ」 「…佐野遙です」 「よろしく。緊張してる?」 「してますね…すごく…」 「しなくていいよ。ほんと、実際2人に会ってさ、確信したね」 安達さんは目をつぶって、小さく頷いた。 耳元でピアスがゆらゆら揺れてる。 「俺のコレクションが勝つ」 「勝ち負けなの?」 「勝ち負けとはまた違うけどさ、でも評価はあるから。学祭のイベントとはいえ、一応先生がコメントくれたり。あとは観に来るんだよね、いろんな人が。それで多少評価はされるじゃん?だから頑張らなきゃ」 なんかもう着てる服からなんかおしゃれだし、ピアスも耳だけじゃなくて唇にも空いてて、とにかく普通にしてたら一生接点の無さそうなタイプの人だ。怖くて近づけない…って思っちゃうけど、でも、喋ってみると優しい。安心した…… 「じゃあ、早速採寸からさせてもらうね!いずみと透くんの採寸は俺やっちゃう」 「あ!え、俺は…?」 遙は僕の服をぎゅっと掴んだ。それを見て、安達さんも泉さんも少し声を上げて笑った。 「1人じゃ色々大変だから、1年生に助けてもらうんだ。紹介しとくね。おーい!」 教室の端にある棚の前にいる人が、こっちを向いた。 「うわ、金髪だ」 遙が小さく呟く。 「今行きます!」 何かに使うらしい道具を持って、こっちに来る。 それから安達さんの隣に立って、こちらを見た。 「服飾一年の篠宮誠です。不慣れなところもたくさんあると思うんですけど、よろしくお願いします」 「ま、真面目だ…」 遙はまた呟く。心の声が漏れまくってるな… 「そうそう、シノは真面目なの。だから組んで貰ってるんだ。遙くんは、シノに採寸してもらっていいかな?」 「よろしくお願いします」 これが蛇に睨まれた蛙…!ってくらい、遙は固まってる。僕より全然緊張してるじゃん…!

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