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ファミレスを出てから、ホラー映画観るってことになって……遙しかホラー映画好きじゃないのに……遙の家におじゃました。
こざっぱりしたワンルームで、居心地がいい。
おじゃましたときはいつもだらだら居座ってしまう。
遙はラグの上に座って、泉さんと僕は勧められるままにベッドに座った。
「そういえばどんな服なんだろね、着るの」
「だねー、楽しみ!」
「みちるはいいよなあ。かっこいいし、ダンサーの人だし、人前出るの全然平気だろ?」
「緊張はするよ?」
「俺、人前出るの怖いからなあ」
「遙は出れる人だと思うな、俺。出ようと思わないだけで」
ほんとそうだなと思う。遙は華がある。
「透もすごい化けそう。メイクされたらむちゃくちゃ雰囲気変わるんじゃない?」
「メイクもされるんだ…」
「楽しみじゃん」
泉さんはそう言いながら、膝の上に置いた僕の手をぽんぽん触った。
「おい!付き合って嬉しいんは分かるけど、いちゃつくなよ。ここ俺んちだしな。だべりながらおすすめの映画観るだけやからな」
「こんなんいちゃいちゃに入らないって!」
「いや、だめ。俺もしたくなるからだめ」
「遙もされたいのー?よちよちしてやろっか〜?」
泉さんは遙に近づいて、顎の下をこしょこしょ撫でた。………ずるい
「すわー!!ばかにすなよおっ!!くっそ、はい、ホラー映画上映開始しまーす」
「やめてって!!」
次はベッドに座ってる僕の隣にサッと戻ってきて、ぎゅっとくっついてくる。
…………ずるい、
「どんなんが怖いの?おばけ?スプラッター?心理的に攻めてくるやつ?」
「呪い…みたいなのとかさあ、そういうのやだ」
「ほんなら、おもろいけどどろどろに人死ぬやつとかは平気?」
「そんなん観ないって」
「や、むちゃくちゃ人死ぬけど、めっちゃおもしろい映画あるんだ。それにしよか」
「いやいやいや」
「いいじゃん。つけちゃおー。へへへ、めっちゃゴア」
遙、むちゃくちゃタチ悪い…!
けど、ずっと右腕に泉さんがくっついてる。映画を観なくて済むように左手で目元を隠しながら横顔を見た。
かたちを頭に叩き込むように見る。
見れば見るほど美しいと思った。
いつまでも見ていたい。
いくらでも描ける気がする。
いつか自分だけのアトリエで、泉さんだけを見つめて、
「ひゃあああっ!!なんで!?なんでそんなことすんの痛いじゃんかあっ!!」
「ほんとにしてるわけないんだから、そんな叫ぶことないだろ!よく見てみ?この血の飛び散り方、内臓、光のあたり方、影、この造形。すごいよ。勉強になる」
「むりむりむりっ、とおるううう」
僕は一切画面を見ない。怖がりすぎて縮こまる泉さんの丸まった背中に腕を回して、引き寄せた。
首元に泉さんの顔がくっつく。抱きつかれる…!
……しがみつかれてるだけだけど。
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