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同じ構内にいるはずなのに、充さんにはなかなか会えない。棟が離れてるから当たり前なんだけど、それでもさみしいと思ったし、やきもきした。 それでもそんなことばっかり言ってられないし、自分はここに何しに来てるんだ!!って言い聞かせながら、油画の作業室で遙と並んで絵を描いている。 僕はもうすぐ出さなきゃいけない課題の仕上げをしてるけど、遙はとっくに終わらせて、なんかデッサン描いてる。 疲れて集中力も無くなってきたから、遙の机の前の椅子に座った。 「何描いてんの?」 そう言いながら覗き込んだら、慌てて隠すみたいに体を動かした。結えた前髪がゆらゆら揺れる。 「なんだよー」 「勝手に見んなやっ」 「人物画?」 「……んーー」 そろーっと体をどかせて見せてくれた。 きれいな人物画だ。目の光がきらきらしてるように見える。…どこかで見たことあるような、 「あー!シノくん!すごいな、むちゃくちゃうまい」 「…はああああ!!きもいよな俺!!自分でもびっくりしてるし、こんな、描いちゃって!」 「なんでよ。僕も充さんの絵描きたいなって思ってるし、遙のこともモデルにしたいけど」 「したいって思うことと、勝手に描くことは違うじゃん!……でも、描きたくなるくらい好き…あれだわ、アイドルの写真買うじゃんか、ああいうノリだわ…」 「自分で描いちゃうんだ」 「そうそう」 「うけんね」 「笑うなよ」 遙は紙を透かせるように掲げて見て、それからもう一度紙の上に鉛筆を滑らせた。大切そうな、柔らかい動きだった。

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