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満席だった。お客さんだらけ。
3人で並んで座れる場所はもうなさそう。
「あそこ2 席並んでるから、遙とシノ座ってきたら?」
「席あるから大丈夫!こっち」
シノと遙について、結構真ん中のあたりまで来た。座席の背もたれに「関係者席」って紙が貼ってある。
「ここ座ろう」
「関係者じゃないし」
「僕は関係者だから大丈夫。始まるから座って」
遙にぐいぐい押されて、わけのわからないうちに席に座ってしまった。
暗転して、公演は始まる。
久しぶりに、充さんのことを真正面から見た。
髪が前より伸びてる。
少し痩せた気がする。
僕の知っている充さんなのかな、充さんにとってはきっと、僕といたことはもう、とうに過ぎたことなんだろうな、
だとしたら、「おー、久しぶりだね」とか言われて、僕も「ですね、お久しぶりです」とか言って笑って、それでもう、このうじうじした恋を終えることができるんじゃないか?
なんて、一瞬は思った
目の前にあるのは、熱いからだだった。充さんの、力強くしなやかな、美しいからだだった。
僕がずっと憧れて、好きだ、描きたい、愛してる、と心底思う、泉充だった。
表情までもが踊りで、
散っていく汗すらも踊りだった。
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