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第7話

授業を終え、帰り支度をしていたとき、胸ポケットに入れていた携帯電話が鳴った。 明日の放課後に予約を入れていた客からの連絡で、予約を今日の放課後、つまり今からに変更して欲しいという内容だった。 場所は予定通り学校内にある生徒会室で、今すぐきて欲しいと・・・。 「参ったな・・・」 今日のノルマは達成しているから正直ざくろは乗り気ではない。 だけど、断れば明日の10万もなくなる。 出来ればそれは避けたくて、ざくろは諦めたように溜息を吐いて、今から指定場所の生徒会室へ行くとメールを返信した。 本当は寮の部屋の方が、終わったあと直ぐに帰れるから良かったのだが、客の要望で生徒会室を指定された。 相手は生徒会書記を務めているらしい。 ざくろは初めてこの学校の生徒会室に訪れた。 華美に装飾を施されたデザインの大きな二枚扉は、見るものを圧巻するほど豪華だった。 「金持ちは扉にまでお金をかけるんだなぁ」 感心しながら生徒会室の扉を叩くと、中から返事を返され、ゆっくりと重い扉を押し開いた。 「失礼します・・・」 挨拶と共に足を踏み入れたざくろは、扉を閉めることもそれ以上足を進めることも忘れ、生徒会室で待っていた男の姿を見るなり息を呑んで固まった。 「あんた・・・!」 そこにいたのは今日の昼休み、教室へ向かう途中の階段下で皮肉をぶつけてきたあの黒髪の男だった。 ざくろが驚いていると男はフッと、楽しそうに鋭い奥二重の切れ長の瞳を和らげた。 たったその笑み一つで強烈な安心感と高揚感を与える。 「早く入れよ」 命令するように言われ、強張る体を動かし、生徒会室に入って扉を閉めた。 「生徒会の人だったんですね・・・。書記って感じはしませんけど」 派手な容姿からは決して想像できない地味な役職の男に微笑みかけると、男は馬鹿にするように顔を歪めて笑った。 「この学校の生徒のくせに生徒会の顔も知らないのか?俺は書記じゃなくて副会長。昼に揉めてた奴が会長だ」 「・・・そうなんですね。すみません無知で」 この学校へは稼ぎに来ているだけで、何の興味もなければ関心もない。 ざくろは生徒会どころか理事長の顔すらも知らなかった。 それどころか自分のクラスメイトの顔もろくに覚えていないし、名前なんて一人として言えない。 もちろん、今までの客のことも。

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