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第8話
「すみません、書記の方知りませんか?俺、その人に用事があるんです」
「書記の槙野(まきの)なら帰った」
「え!?嘘!」
ざくろは男の言葉に虚を突かれたあと、長い溜息を吐いた。
「日時変更してきたくせにドタキャンか・・・」
初めての経験に苛立ちが隠せず、顔を顰めて男に背を向ける。
「じゃあ、用はなくなったんで失礼しました」
「待てよ。西條 ざくろ」
扉に手をかけて帰ろうとしたとき、フルネームを呼ばれて振り返ると、男は腕を組んで真っ直ぐな目を向け、聞いてきた。
「お前、売りしてんだって?槙野から聞いた」
「・・・ええ。そうですよ。生徒会として取り締まります?」
だとしたら面倒だな。と、思ったが男の口から出た言葉は意外なものだった。
「いや、今日は槙野に譲って貰ったんだ。俺の相手しろよ」
目を細め、上から下まで値踏みするように全身を見てくる男にざくろは気圧されて、ビリっと緊張が体に走った。
明らかに女慣れしているこの男を満足させられるのか正直、不安が込み上げる。
「一回10万だっけ?三回させろよ。50万払ってやる」
不敵に笑って、高額を言ってくる男にゴクリと喉が鳴った。
50万・・・
魅力的な金額にグラっと心が傾くものの、冷静になれと自分に言い聞かせて、思い留まった。
「す、すみません。一回、10万でお願いします・・・」
「50万じゃ不満か?なら100万出してやる」
「ち、違います!その・・・。俺、体力がそんなになくて・・・」
胸ポケットから分厚い札束を取り出す男に、ざくろは首を横へ振って訳を話した。
「実は・・・、今日はもう仕事をこなした後なんです。だから今から三回も付き合うと正直、体が辛いっていうか・・・、その・・・・すみません。予定通り一回だけでお願いします」
軽く頭を下げて言うと、男は苦虫を潰したような顔で悪態吐いた。
「本当に、ビッチなんだな」
椅子から立ち上がり、自分の胸倉を乱暴に引き寄せて吐き捨てる男に、ざくろは歯を食いしばって目を逸らした。
「否定もしねぇーのか?この淫乱野郎」
ネクタイを力づくで外され、シャツが引き裂かれてボタンが弾け飛ぶ。
暴力的な男の振る舞いにざくろは身体を強張らせた。
「っ!」
パンッと頬を平手打ちされて、驚いて目を見開き、男を見る。
男はどこか機嫌悪そうな顔で自分を見下ろしてきて、ざくろは頭の中が混乱した。
何が気に入らないんだろう?
三回したいっていうのを断ったから?
でも、本当に今日はもうクタクタだ。
これが、今日の客ならまだ考えもしたが、予定外の日時変更に加えて、三回だなんて無理だ・・・
「ボケッとせずに、サッサと服脱げよ。この淫乱ビッチが」
ドンっと肩を突き飛ばされると、ざくろは尻餅をついて、憤然と立ち尽くす男を怯えた瞳で見上げた。
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