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第12話
重い瞼を開けると見知らぬ場所が視界に広がり、ざくろは焦って体を起こした。
「起きたか?」
声がする方へ顔を向けると、腰にバスタオルを巻いただけで上半身裸のシャワーを浴び終えた九流が飲みかけの水が入ったペットボトルを片手に立っていた。
「・・・・えっと、すみません。ここって?」
キングサイズのベッドの上で混乱する頭で聞くと、九流は気怠げに濡れた髪を掻き上げながら、この場所がどこかを教えた。
「お前、気失っただろ?流石に生徒会室に放置もできねーから俺の部屋に連れてきた」
「え!?ここ、先輩の部屋なんですか!?」
「ああ」
この寮は全室個室で贅沢だと思っていたが、九流の部屋は一般生徒とは全くと言っていいほど部屋のレベルが違った。
ホテルのように豪華で広い部屋は天井からシャンデリアがぶら下がり、家具も家電も品が良くて高級品なのだと疎いざくろでも一目で分かった。
「・・・凄い。九流先輩の部屋は他とは違って豪華ですね」
感心するよう息を漏らしながら、部屋の中を見回すと不機嫌な声に一喝された。
「じろじろ見るな」
言われて確かに失礼だと気付くと、視線を焦って自分の体へ落とした。
「す、すみません!」
ざくろは服を着ている事を確認すると、べッドから慌てて降りた。
生徒会室で制服のボタンを九流によって引き千切られたので前は全開になっていたが、服を合わせるように閉じて身支度をする。
床に無造作に置かれていた鞄を手に取って、早々に部屋を去ろうとするざくろの細い二の腕を九流は掴んだ。
「おい、忘れもん」
ドンっと、胸にあの分厚い札束を押し付けられて、目を見開いた。
「え、いや・・・・」
戸惑いつつもざくろはお金を受け取ると、そこから一万円札を10枚だけ抜き取って残りは九流へ差し出した。
「・・・・・一回10万なんで」
「いらねーよ。持ってけよ」
「いえ・・・、自分の中のルールで決めてるんです」
九流の手に残りのお金を渡すと、10万円を鞄の中へ入れて、ざくろは頭を下げた。
「気を失ってすみませんでした。お手数おかけしました」
丁寧な言葉で謝罪してざくろが部屋を出て行こうとした時、九流は自分の中の何かが騒めいてイライラするのを感じた。
気が付いた時には、手に持っていた札束を扉へ思い切り投げ付けていた。
「くそっ!ちょっとこっち来いっ!!」
ビックリして身を竦めるざくろの手を掴み、ベッドの上へ投げ飛ばすと、近くの大きな革張りの一人用ソファに九流は腰掛けた。
「お前、幾らで俺のもんになる?」
不機嫌な声で理解し難い内容を聞かれ、ざくろは固まる。
「は?」
間抜けな声で聞き返すと、苛立った声が返ってきた。
「お前を買ってやるっつってんだよ!だけど他の奴とその体を共用するなんて真っ平だ!俺が卒業するまで俺だけの専属になれ。幾らだ?提示金額払ってやる」
九流の申し出にざくろは硬直した。
昼間に偶然会って、自分に全く興味がなさそうだった男がいきなり専属になれと言ってきたのだ。
嘘か本当かいまいち分からないが、冷静になるよう心の中で自分を言い聞かせる。
「あの・・・、有り難いんですけど専属とか俺考えてないんです・・・・」
だから・・・、と断ろうとした時、九流が指を二本立てて信じられない金額を口にした。
「二千万。この金額で契約したい」
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